後発ワクチン治験、離脱する被験者が増加 承認ワクチン接種可能になり
◆利己的なら参加資格なし 専門家不快感を示す
有効なワクチンが増えるにつれ、治験参加者の身勝手な行為も増えている。医療ニュースサイト『MedPage Today』によれば、ノババックス社の治験参加者のなかで、抗体検査を受けて自分に打たれたのがワクチンかどうか確かめる動きが出ているという。知りたくなるのは人の性(さが)という意見もあるが、専門家はそういった行為は治験の価値を下げてしまうと断じる。ワクチンを接種したとわかれば、マスクをしない、ソーシャルディスタンスを守らないといった行動の変化が起きかねない。結果として感染の確率が高まり、ワクチンの効果が低く見える可能性があるとしている。
さらに、抗体検査などの抜け駆け行為はほかの参加者の貢献を損ない、別の臨床試験にも悪影響を及ぼしかねないとスタンフォード大学のスティーブン・グッドマン氏は指摘する。利己的な理由だけで参加するのなら治験に登録すべきではないと主張。個人的な理由で参加して治験を台無しにするのは科学的妨害行為であり、強く非難されるべきだとしている。
◆待てない治験参加者 やっぱり自分優先
ノババックス社は、ワクチンが安全で有効とわかれば、治験でプラセボを打たれていた人にはワクチンを、ワクチンを打たれていた人にはプラセボを打つという「盲検交差」を、イギリス、アメリカ、メキシコの参加者に適応すると4月上旬に発表した。実際に行われており、治験参加者を安心させ離脱を防ぐやり方だとサイエンス誌は説明している。
しかし3月ごろには「盲検交差」がいつ実現するのかわからなかったため、承認されたワクチン接種の順番が近づいていた高齢者を中心に、離脱が増えたという。ノババックス社は65歳以上の治験登録者数を全体の25%に設定していたが、最終的には12.5%になってしまった。(MedPage Today)
制度の不備も、治験参加者が離脱を望む原因となっている。イギリスでは、国民保健サービス(NHS)のアプリに、ワクチン接種を証明するワクチンパスポート機能が加わることになった。ところが、正式に認可されていないノババックス製ワクチンを打たれた治験参加者にはこの制度が利用できないことが判明。海外旅行に出かけられないなら治験から降りたいという人が続出していると、英ガーディアン紙が報じている。
ノババックス製ワクチンの承認申請は最速でも7月まではないとされている。NHSでは治験参加者の記録も加えられるよう作業を進めており、政府が次回の入国要件の見直しを行うまでに実施する予定としている。
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