ワクチン接種に慎重な日本 海外紙の見る理由、メリットとリスク

Koji Sasahara / AP Photo

 世界各国で新型コロナウイルスのワクチン接種が始まっているが、日本はやっと2月中旬から医療従事者への接種が開始される予定だ。これまでのワクチン行政のまずさや、国民のワクチン嫌い、ワクチンの品薄が影響し、出遅れた接種がさらに遅れるのではないかという声が海外から出ている。

◆準備不足? 国産ワクチン出遅れ
 ワシントン・ポスト紙(WP)は、日本で接種が遅れている理由の一つとして、国内のワクチン産業の弱さを上げる。厚生労働省内に設置されたワクチン・血液製剤産業タスクフォースによる2016年の報告書を取り上げ、安全保障上必要不可欠なワクチンの研究と生産能力の増強が求められていたのに、問題は棚上げされたと指摘。結果としてパンデミックへの備えがなく、国産の開発の遅れにつながったとしている。

 日本は世界第3位の製薬市場だが、世界保健機関(WHO)によれば、現在世界で臨床試験に入っている63種類のワクチンのうち、日本のものはわずか2つだ。国内では国産ワクチンの実用化は2022年以降になる可能性があるとも報じられている。

◆海外ワクチン大量確保 接種に国内治験の壁
 もっとも日本政府は海外とワクチン供給の契約を結んでおり、少なくとも5億6400万回分のワクチンを確保している(ロイター)。量としては十分すぎるほどだが、肝心の接種が始まらない理由の一つは、国内治験をすべてのワクチンに課すことだと多くの海外メディアが指摘している。

Text by 山川 真智子