ワクチン接種義務化に動く米大学 新学年に備え

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 国民へのワクチン投与が順調に進んでいるアメリカ。現在は国内全州で16歳以上の接種が可能となっている。ジョンズ・ホプキンス大学の統計によると、同国内では2億3736万本のワクチンが投与されており、人口の27.89%にあたる約9157万人が接種を完了している。そんななかで、米疾病対策センター(CDC)は27日、マスク着用に関する新たなガイドラインを公表。ワクチン接種を完了した人は屋外でマスクを着用しなくてもよい、とした。新型コロナウイルス対策に関して、アメリカはまた一歩前進したと言えよう。

 ワクチン接種を終えた人々が外出や旅行に関して新たな自由を手にしている一方、未接種の人々の肩身は狭くなるばかりだ。そのようななか、アメリカでは5月下旬から6月上旬に学年度が終了し、高校を卒業して大学進学に備える生徒も多い。一部の州では学生(新入生含む)に対し、8月に始まる新学年前にワクチン接種を義務付ける動きが広がってきている。
 
◆カリフォルニア州では100万人に影響
 LAタイムズによると、アメリカ国内最大級の大学機構であり、州内に多数のキャンパスを擁するカリフォルニア大学とカリフォルニア州立大学は22日、新学年開始に先立ち、学生、教師、職員など、キャンパス内の全員にワクチン接種を義務付ける意向を公表した。同2大学機構に所属する人々は100万人以上存在する。新学年開始まではまだ4ヶ月弱あり、いまは16歳以上なら誰でも接種を受けられるため、十分な時間があると言える。

 アメリカでも、現在16歳以下の子供たちの大半は、ワクチン接種を受けていないままで学校に通っている。しかし、授業が終わったらすぐに帰宅する子供たちの場合と違い、アメリカの大学生はキャンパス内の学生寮に住む場合も多い。寮の室内はもちろん、通常は大人数のクラスやカフェテリア、図書館など、他人と接する場所や状況が多く存在する。しかも、親元を離れて開放的な気分になったり、寂しい思いをしていたりする学生たちは、キャンパス内でソーシャルな集まりに参加することが非常に多い。その結果、昨年中は多くの州の大学寮内において新型コロナのクラスター感染が発生した。ワクチン接種を任意にした場合、接種していない学生間で感染拡大が起こる可能性も高く、そうなるとキャンパスを閉鎖する可能性も出てくる。

 カリフォルニア大学とカリフォルニア州立大学はどちらも同州が運営する州立大学だが、前出の記事によると、スタンフォード大学などの私立大学でも、医学的または宗教的理由がある場合を除き、ワクチン接種を義務化する意向という。

Text by 川島 実佳