中国で進む少子化 「一人っ子」の深い爪痕、変わる若者たち

Andy Wong / AP Photo

 世界で最も人口の多い国、中国が、子供不足の危機に瀕している。その理由を解説する。

◆一人っ子政策の爪痕
 中国当局は、国の人口を管理するため、1979年に一人っ子政策を導入した。よく知られるように、一家族につき子供を基本一人までとする政策だ。しかし2014年、中国の生産年齢人口が30年以上ぶりに減少し始めたため、驚いた中国政府は翌年一人っ子政策の終了を発表。2016年1月1日からは、子供を2人まで持つことができるとした。ところが、それにもかかわらず、2016年から2019年の間に、人口千人あたりの出生数は13人から10人に減少した。(CNN、1/30)

 結婚も同様だ。「中国国家統計局発表データによれば、わずか6年で初婚の中国人の数は、2013年2380万人から2019年の1390万人へと41パーセントも減少した」。結婚率低下にも、一人っ子政策が影を落としている。というのは、まず、一人っ子政策のために、結婚できる世代の絶対数が減ったからだ。次に、とくに農村部において、中国人が娘よりも息子を好む傾向があることから、人口の性比が偏ってしまったことだ。「現在、中国には男性が3000万人以上多く」、結婚相手を見つけるのが難しくなっている。(同)

◆教育の向上と結婚年齢の上昇
 他方、1990年代、中国政府は9年間の義務教育を急速に普及させた。1999年には大学の入学者数を増やすために高等教育を拡大した。その結果、「2016年には、高等教育プログラムでは女性が男性を上回り、大学生の52.5%、大学院生の50.6%を女性が占める」ことになった。高等教育の普及で、男女ともに結婚に踏み切る年齢も高くなった。「中国社会科学院によれば、1990年から2016年にかけて、初婚の平均年齢は中国人女性で22歳から25歳に、中国人男性で24歳から27歳に上昇」している。都会はその傾向がより顕著で、「2015年に上海では、初婚の平均年齢は男性で30歳、女性で28歳」だった。(同)

 そしていま、ミレニアル世代の多くは、結婚を避けるようになった。とくに学力が向上して経済的自立を手に入れた女性にとって、結婚とは性差別を助長する家父長制度にほかならない。「結婚するということは、ストレスが増えるということで、生活の質が低下すること」と、ある31歳独身女性は明言する。フェミニスト活動家のシャオ氏が指摘するように「一人っ子政策が緩和されて以来、二人目の子供の出産のために女性が職場を離れるのを雇用主が恐れ、職場での女性に対する差別が悪化している」背景があればなおさらのことだ。(同)

Text by 冠ゆき