突然の「残業代帳消し」「契約終了」…コロナで失業したスイスで働く日本人たち

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 夏になり、来年度(学校は秋入学)のための契約更新の時期がやってきた。学校からメールが届き、そこには「来年度から教育体制を変えることになりました。残念ながら、今年度をもって●●様(緑さん)との契約を終了します」と書いてあった。

 学校が、緑さんではなく、代替教員を継続採用することにしたかどうかはわからない。だが、安い給与で済む点を考えると「代替教員は、きっといまも働いていると思います」と緑さんは言う。体制を変えるというのは表向きの理由で、校舎を新築したばかりだし、コロナ禍の影響で私立学校に子供を通わせる家庭の数も減ることもあるから、学校の財政が厳しくなるかもしれないことは緑さんにも容易に想像がついた。

 スイスでは、通常、就職活動時に前職の上司に書いてもらった職務評価を提出する。緑さんは、その評価が下がることで再就職の不利になっては困るからと、波風を立てずに契約解除を承諾した。

◆貯金が底をつく
 ロックダウン中、緑さんは無給だった。本来なら、スイス政府の救済措置を受ける資格があり給与に見合った額の支給を受けられるはずだったが、それについて学校からは説明がないままだった。自分から申請すべきだったのかもしれないが、それはいまだによくわからないそうだ。

Text by 岩澤 里美