第二波に苦しむヨーロッパ、次々と規制再強化 試される連帯

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◆回避したかったロックダウン
 感染拡大の速度を緩めたくてもこれ以上の経済的打撃は避けたい各国は、一様にロックダウンを回避しようとしてきた。ほぼすべての国で、フィジカルディスタンスを推奨し、イベントの人数制限やマスク着用の義務化が行われた。また、それでは足りないと見るや10月半ばからは次々と飲食業の休業や、営業時間短縮を課した。夜間外出禁止令を導入した国や地域も多い。その後ロックダウンに移行したフランスやベルギー、イギリス以外に、イタリア、ギリシア、チェコ、スロバキア、ルクセンブルクなどが夜間外出禁止を施行している。

 しかし、それらの努力をもってしても感染の加速は収まる様子がなく、10月後半に入ってからは、ステイホームを原則とする外出制限(ロックダウン)を行う国や地域が続出している。最初にロックダウンに踏み切った国はアイルランドで、10月21日から自宅から5kmを超える移動が禁止された。続いてイギリスのウェールズが10月23日から2週間のロックダウンに入った。

◆続々と制限強化が発表された10月最終週
 10月28日にはフランスが10月30日から12月1日までのロックダウンを発表。この演説のなかで同大統領は過去2週間で感染者が倍増したこと、28日の時点では集中治療室の病床が3000近くCovid-19の患者で塞がっており、11月半ばには9000人になると見込まれることなどを説明。第二波はこれまで専門家らが想定してきた最悪のシナリオよりもひどい速度で進んでおり、フランスのみでなくヨーロッパ全体に共通する問題であると繰り返し述べている。

 続いて10月30日には、ベルギーが11月2日から12月13日まで6週間のロックダウンを決定した。ベルギーではこの時点で「すでに第一波のピーク時よりも多くのコロナウイルス患者が入院して」いた(20minutes紙、10/30)。具体的な数は、「入院患者が6187人、そのうち1057人が集中治療室」という状況で、「週に10万人を超える新規感染者(1日1万5000人以上)」を記録していた(同)。ちなみに同国の人口は約1150万人と、東京都の人口よりも少ない。アレクサンダー・デクロー首相は、「11月半ばには1万人が入院」(5minutes RTL、10/31)し、「集中治療室に2800人」(20minutes紙)と見積もっており、東京と比べるとその逼迫度がよくわかる。同じく10月30日にはルクセンブルクも夜間外出禁止令を含むより厳しい生活制限を導入し、アンドラ公国も新たな規制を発表している。

 10月31日には、オーストリアが11月3日から11月末まで続く夜間外出禁止令を含むソフトロックダウンを発表。「人口880万人のオーストリアは、現在1日5000人を超える感染者を記録している。10月頭には感染者数は1日1000人に過ぎなかった」(20minutes紙、10/31)のであるから、ひと月で5倍になった計算だ。セバスチャン・クルツ首相は「いま行動を起こさなければ、集中治療室は飽和状態になってしまうだろう」(同)と危機感を表現した。

 同日10月31日には、ポルトガルも「部分的な外出制限」を課すことを決めた。同国は「すでに10日ほど前から北部の3都市で(外出制限を)実施していたが、11月4日からは(中略)121の市町村」(20minutes紙、10/31)に拡張する。対象となるのは「ポルトガルの人口の70%にあたる約710万人」(同)で、基本的にステイホームの生活を送ることになる。

 10月31日はイギリスもまた、11月5日から12月2日までのイングランドのロックダウンを発表している(スコットランド、ウェールズ、北アイルランドは含まない)。イギリスはCovid-19による死者が4万6717人と、ヨーロッパで最も多い国だ。新規感染者数は一日平均2万人を超えている。同国政府の科学顧問パトリック・ヴランスは、「今冬の死亡者数は、第一波の2倍になる得るだろう」(20minutes紙、10/31)と予測している。ボリス・ジョンソン首相もまた「ウイルスは、我々の科学顧問らが予測した最も悲観的なシナリオよりも素早く広まっている(中略)、いまが行動すべきときだ。ほかに選択肢はないのだから」(同)と悲壮感を隠そうとしない。

 そのほか、ロプス誌(11/1)によれば、スペインは一部地域の移動を一時的に禁じる策を取り、ドイツは11月2日から不要不急の移動を避ける政策を導入する。ギリシアは11月3日から「1ヶ月間、夜間外出禁止を含む各種制限」を施行することを決めたし、イタリアは一部都市のロックダウンを検討しているという。

Text by 冠ゆき