世界的デザイナーも制作、広がるマスクの多様性 透明マスクも

Samatoa Lotus Textiles

◆スタイリッシュであると同時に機能的
 中国のデザイナー、ジョウ・リーは、シルクのマスクにN95フィルターを組み合わせたものを2月から製造している。これからの気候に合わせ、通気性の良い薄手の絹を選び、縁起が良いとされる花や文字の刺繍を施したもので、スタイリッシュであると同時に機能性も追求した品だ(ロイター 5/19)。

 自然界唯一のマイクロファイバーである蓮の茎の繊維を使ったマスクもカンボジアで開発された。サマトア社が販売する写真のマスクは二層となっており、外側には蓮の繊維を平織りにした布が、内側には、不織の蓮繊維が使われている。同社によれば、合計300万本のマイクロファイバーがネットの機能を果たし、「通常の布と比べて200倍以上のフィルターの効果を発揮する」ものだ。

Samatoa Lotus Textiles

◆聴覚障害者の読唇を助ける透明なマスク
 フランスのブルターニュでは、元仕立屋のマリー・グルアンさんが考案した透明なマスクが人気を呼んでいる。20 minutes紙(5/26)によれば、マスクで口元が隠れることで読唇ができずコミュニケーションに苦労している聴覚障害者を助けようと、70以上の試作を経てたどり着いたモデルだ。手話は顔の近くで手を動かすことが多いため、フェイス・シールドだと手が当たってしまう問題があったという。また、グルアンさん考案の透明マスクには、聴覚障害者に利用の多い補聴器装着の妨げとならない工夫もされている。聴覚障害者用に開発されたマスクではあるが、蓋を開けてみると、言語療法士や、保育士、コメディアンなど、聴覚障害者以外からの問い合わせも多いという。

 今回のパンデミックにより、疫病予防にマスクが重要な役目を果たすことに気がついた国は多い。これから少なくともしばらくは、靴と同じく、マスクは外出する際の「必需品」となるであろう。気候、文化、趣味……多様な人々のニーズに応じ、多様化するマスク。歓迎したい動きである。

Text by 冠ゆき