製薬会社、ビル・ゲイツが犯人、5Gが拡散……広まるコロナ陰謀論 その心理とは

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 新型コロナウイルスのパンデミック発生以降、その流行を影の勢力が司っているとするなどの陰謀論がささやかれるようになった。こうした陰謀論は誤った知識を伝播するだけでなく、陰謀論者には先入観と暴力性が強い傾向にあるなど、実害も指摘されている。コロナ以降にSNSなどを通じて広まった陰謀論と、その発生のメカニズムを分析する。

♦︎「仕掛けられたパンデミック」
 新型コロナウイルスに関する陰謀論の最も知られた例の一つとして、『Plandemic』(仕掛けられたパンデミック)と題された動画がある。この動画は26分にわたるもので、YouTubeに投稿されると数日のうちに200万回を超える再生回数を稼いだ。映画監督のマイキー・ウィリス氏が世界で最も優れた科学者を自認するジュディー・ミコヴィッツ氏にインタビューする形式で、新型コロナウイルスは高額なワクチンを販売する目的で開発されたというのがおもな主張だ。

 米公共ラジオ局のNPRは、ミコヴィッツ氏はエイズなど感染症研究の分野で活動実績があるものの、著名な人物ではないと指摘している。2009年の論文で彼女はマウスレトロウイルスが慢性疲労症候群に効果がある可能性を論じたが、後に論文は信頼性の裏付けが取れないことから撤回されている。フェイスブックは現在までに、COVID-19に関する誤った知識を広めることを理由に、規約違反で動画を削除した。

 その他、コロナウイルスに関する出所不明の陰謀論は後を絶たない。陰謀論の一例として、マイクロソフト共同創設者であり現在は慈善活動を展開するビル・ゲイツ氏がコロナウイルスを開発した黒幕であるとする風説がある。また、次世代携帯インフラの5G規格がコロナの伝染を早めているとする陰謀論が発生し、イギリス・リバプールでは電波塔への放火とみられる事件が相次いだ。5Gがコロナの原因であるという科学的な裏付けは現時点で存在しない。

 一部の陰謀論者たちはロックダウン反対などのデモ活動を展開しており、デモの動きはアメリカで盛んなほか、オーストラリアにも伝播している(英ガーディアン紙)。

Text by 青葉やまと