集団礼拝できず、イスラム教ラマダンにも影響 コロナ下のアジアの現在

AP Photo / Zik Maulana

 アジアでは数百万人のイスラム教徒が4月24日、イスラム教で最も神聖なひと月とされるラマダンに入った。しかしコロナウイルスで自粛ムードが続くなか、ラマダンの伝統を大幅に変更する必要が生じている。

 イスラム教徒にとってのラマダンは、神に近づくことができる期間であり、家族や社会とより親密になれる期間でもある。しかしパンデミックが広がるなかでは、多数のイスラム教徒が職を失い、家族を訪ねる予定をキャンセルせざるを得ず、家族全員で日々の断食を解くことができない状態となっている。イスラム教では、日中は断食を続け、夜の礼拝時に皆が集まり食事をともにするのが一般的だ。

 ウイルスの拡散を防ぐため、各所でモスクが封鎖されている。

 インドネシアの首都、ジャカルタ在住のベルム・フェブリアンシャ氏は、「歴史に残る悲しい出来事です」と嘆く。

 イスラム多数派国家としては世界一の人口を有するインドネシアは、国民の帰省を制限するため、旅客便と鉄道の運行を停止した。当局は、私用車のジャカルタ外への移動も禁止している。

 イスラム教徒が多数派を占めるマレーシアは、ここ最近の新規感染者数が大きく減少しているものの、ウイルス拡散防止に向けたロックダウンを2週間延期した。ムヒディン・ヤシン首相はラマダンの前夜、国民のパンデミックに対する「ジハード」が成果を発揮していると認めたが、ウイルスを完全に封じ込めるまではロックダウンを続ける必要があると述べている。

 シンガポールやブルネイといった近隣諸国と同様、マレーシアでも人の集まるラマダン・バザールの開催が禁止となった。ラマダン・バザールには、飲食物や衣類を販売する屋外市場が建てられたり、沿道に露店が並んだりして、多くの人が訪れる。

 パキスタン医療協会は、全国的なモスクの閉鎖に否定的な立場を取るイムラン・カーン首相と国内の宗教指導者らに対し、方針を改めるよう求めたが、失敗に終わった。しかしその後、同国南部のシンド州は、ラマダン期間中の礼拝禁止を発令した。

 パキスタン政府はソーシャルディスタンスの徹底を命じているが、カーン首相はその実施については、各地の聖職者らに委ねるとした。一部の聖職者はこれに反し、モスクに集まり信仰を捧げることで、モスクを守るよう呼びかけている。

 インドでは4月25日にラマダンが始まった。イスラム教宣教団体の集会をきっかけとしてウイルス感染者が急増したという指摘があり、イスラム教徒への批判の声が高まるなかでの開始となった。

 ここからは、その他アジア太平洋諸国における状況の推移を見ていく。

◆日本:刑務所で医療用ガウンを作成
 日本では、医療従事者が使う防護用ガウンを作成するという形で、受刑者もコロナウイルスとの闘いに参戦するとしている。法務省担当者は先月24日、多数の病院で医療用ガウンが不足しており、医療従事者に危険が及んでいると訴えた。法務省によると、全国75ヶ所の刑務所のうち41ヶ所で、1ヶ月に20万着を目途に防護用ガウンを作成する見込みだ。日本では、マスクなどその他の防護用具も不足している。

◆香港:大学入試始まる
 ソーシャルディスタンスの実施のもと、5万2,000人を超える学生が参加し、大学入試が始まった。パンデミックの影響により1ヶ月遅れての開催となる。試験は1ヶ月にわたり実施されるが、受験生とスタッフにはサージカルマスクの着用と手の消毒が義務付けられる。受験生はさらに、試験会場で検温を受け、健康状態を申告する用紙に署名しなければならない。熱が高ければ、入場は許されない。机は少なくとも1メートルは間隔を空けて設置。香港が発表している感染者数は1,036人、死者数は4人。

◆フィリピン:戒厳令でけん制
 フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領は、共産主義の反政府勢力がコロナウイルスによる隔離中、食糧と現金の輸送の警護にあたっていた軍人2人を殺害したと非難した上で、遺憾の意を示し、戒厳令を宣言するとけん制した。大統領は「全国民に向けた警告として、武装部隊と警察に戒厳令を宣言すると通告している。撤回するつもりはない」と述べている。フィリピン政府の発表によると、同国では7100人超がウイルスに感染し、477人が死亡した。検査数が限られているため、実際の数はさらに増えるだろうとする見方が多い。

◆韓国:元軍人にマスクを提供
 韓国は、国内のマスクの供給は安定しているとして、1950~35年の朝鮮戦争に参加した海外の元軍人にマスク100万枚を送ると発表した。同国は3月初旬にマスクの輸出を禁止し、国内の供給にあててきた。韓国は新たに6人の感染を報告したが、死者は出ていない。合計感染者数は1万703人、死者数は240人となっている。

◆ベトナム:市民の帰国進める
 ベトナムでは1週間にわたり新規感染者が出ていなかったが、ロックダウンを解除した翌日の4月24日、保健省は新たに2人の感染を発表した。2人は22日に留学先の日本から帰国。日本に足止めされていたベトナム人を輸送する専用機に乗っていたが、到着後すぐにほかの乗客からそろって隔離された。ベトナムはチャーター機をさらに手配し、市民の帰国を進めている。

◆インド:感染者が急増
 インドでは、おもに中部のマハーラーシュトラ州で感染者が急増。新たに1690人がウイルスに感染し、合計感染者数は2万2930人となった。首都ムンバイの当局は、人口が密集するスラム街の感染防止対策として、一部住民に抗マラリア薬のヒドロキシクロロキンを投与する予定だ。ヒドロキシクロロキンは心臓障害を引き起こす恐れがあり、コロナウイルスへの効果も実証されていないが、アメリカのトランプ大統領はコロナウイルスの治療薬として支持している。ムンバイ保健当局担当者のダクシュ・シャー医師は計画の詳細について、「手続きを進めている」と述べている。

◆中国:死者数がゼロに
 中国は、ウイルスによる新規死者数が9日連続で0人となり、新規感染者数も6人にとどまったと発表した。うち2人は海外からの帰国者。いまも915人が病院で治療を受けており、57人は重症だとしている。公式発表によると、昨年末に同国中部の都市、武漢で最初に確認されたパンデミックによる合計感染者数は8万2804人で、死者数は4632人にとどまっている。

 中国は、アメリカの世界保健機構(WHO)に対する批判を「事実無根」とし、支持は得られないと主張している。外務省の耿爽(グン・シュアン)報道官は日例報告で、WHOは「積極的に任務を遂行し、各国の感染防止対策を支援する上で重要な役割を果たした」と述べている。耿爽報道官はまた、アメリカにはWHOを支援する法的義務があるとし、拠出金の提供を拒否すれば、「感染拡大防止に向けた各国の協力体制に深刻な危険をもたらす」と主張。トランプ大統領はパンデミック対策におけるWHOの役割について、効果を発揮していないとし、WHOへの拠出金を停止する指示を出している。

Translated by t.sato via Conyac

Text by AP

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