イランの新型ウイルス危機 米の経済制裁、信頼できない政権

Ebrahim Noroozi / AP Photo

 イランで新型コロナウイルス感染が拡大し、27日までに245人の感染が確認され、すでに26人が死亡している。アメリカによる経済制裁の影響で物資の不足が心配されるうえ、ウクライナ旅客機の誤射事件などで政権への信頼も低下しており、感染を封じ込める能力がないのではないかと心配されている。

◆感染源不明 死者は中国以外では世界一
 イラン政府は、数週間イラン人の感染を否定してきたが、2月19日にテヘランから南に140キロ離れたコムの町で2名が感染したことを認め、同日その2人が死亡したと発表した。誰が最初に国内にウイルスを持ち込んだのかは特定できていない。突然の発表は市民を困惑させた。イラン人死者176人を出したイラン軍のウクライナ機誤射事件とその隠蔽発覚で、政府への信頼感は記録的に低くなっている。政府がまた故意に事実を隠していたのではないかという疑惑が国内で高まった(フィナンシャル・タイムズ紙、以下FT)。

 専門家は、イランの周辺国にも感染が次々と確認されていることから、感染者数と死者数が過小に報告されているのではないかと懸念している。コム選出の国会議員は少なくとも市内で50人が死亡していると主張しているが、政府は否定している。数日前には感染防止を担うはずの保険副大臣の感染が判明し、国民には悲観的なムードが漂っているという(AP)。

Text by 山川 真智子