イランの新型ウイルス危機 米の経済制裁、信頼できない政権

Ebrahim Noroozi / AP Photo

◆米制裁の影響 必要な物資供給に不安
 イランのロウハニ大統領は、市町村の隔離などの計画はないとしているが、テヘランでは夜を徹して交通機関の消毒が行われ、感染防止のため車両の手すりが取り外された。市内の交通量は減り、人混みで物の表面に触らないようにという張り紙などが出されているという(AP)。他人と共有する水たばこのパイプはテヘランでは警察が禁止し、感染者の出た地域の学校や大学は閉鎖され、スポーツ、イベント、映画プレミア上映などもキャンセルされた(BBC)。

 イランの医療技術は地域でも高いほうだとされているが、アメリカの経済制裁を受けており、制裁が医療品の供給不足につながると心配されている。WHO(世界保健機構)はウイルスの検査キットや医療従事者用の保護用品を送っているが、それでも多くのイラン人は品不足を恐れている。人道的観点から医療品の輸入は制裁から除外されているが、銀行がアメリカのルールを破ることを恐れてイランの送金を扱いたがらないことから、売り手はあるのに決済ができず、検査キットなどが輸入できないということだ(BBC)。

 感染拡大を受け、薬局ではマスクや消毒剤を求める市民の行列ができている。APによれば、イランでは国内製造できる物の輸入が法律で禁じられており、マスクや消毒剤などは手に入りにくくなっている。価格も高騰しており、政府はこれまでのルール緩和に動いている。

 ソーシャルメディアでは、マスク不足は政府が数百万枚のマスクを数週間前に中国に寄贈したからだという投稿があり、地元メディアでも、中国企業がイラン国内のマスクを買い占めたという報道があった。イラン政府は3ヶ月間マスクの輸出を禁止すると発表し、国内工場に増産を命じている(BBC)。

◆孤立するイラン 政府の対応不足
 イランは外国旅行を禁じてはいないが、トルコ、パキスタン、イラクなどを含む近隣国は国境を封鎖。トルコとアラブ首長国連邦はイランからのフライトを停止している。これらの国々は石油以外での重要な輸出先であり、イラン経済は苦痛を被るだろうとBBCは述べる。

 コンサルティング会社のユーラシア・グループのアナリストは、イランは感染による市民、経済、そして近隣国へのリスクを過小評価しており、国家レベルの意思決定における機能停止が、ウイルス封じ込めの能力の深刻な妨げとなっているとしている(AP)。

 感染はすでに、イランを通じてイラク、アフガニスタン、パキスタンなどのより医療レベルが低い国々にまで広がっている。イランでは今後も感染者は増えると見られ、WHOは専門家を現地に派遣し状況把握とサポートを行うとしている(BBC)。

Text by 山川 真智子

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