【独銃撃】世界で連鎖する白人主義テロ 欧米で懸念高まる

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◆欧米世界で高まる極右テロへの懸念
 この事件は近年欧米各国で発生する極右テロの一つに過ぎない。白人至上主義者によるこの種のテロが大きく懸念されるようになったのは、去年の3月中旬にニュージーランドのクライストチャーチで発生したモスク銃撃テロ事件からだ。この事件以降、ネットでは白人至上主義者のチャット回数、白人至上主義をあおる動画やメッセージが大幅に増えたという。

 このテロは、オーストラリア人のブレントン・タラント容疑者が、金曜礼拝中のイスラム教徒が集まるモスクを襲撃し、イスラム教徒50人以上を殺害した。

 タラント容疑者も、事件直前にネット上にマニフェストを公開し、「白人の世界は移民・難民に侵略されている」など白人至上主義的な考えを強調し、欧米世界の同調者、信奉者たちに自らに続くよう呼びかけた。また、同容疑者は自らの犯行の様子をフェイスブックでライブ配信し、世界各地の白人至上主義者たちの関心を引こうとした。

 そして去年の8月には、メキシコ国境に近いテキサス州エルパソでも、ヒスパニック系移民の人口増加をテキサスへの侵略と動機づける白人至上主義による銃乱射事件が発生し、メキシコ人8人を含む22人が死亡した。この男も、事件直前に自身のマニフェストをネットに投稿し、タラント容疑者を賞賛していた。

◆ネットで通じ合い、互いを高め合い、共同体意識を形成
 今回のドイツテロ事件の容疑者は単独犯で、ネットに公開した動画やメッセージでは、最近発生した同種のテロの実行犯に言及していない。だが、こういった白人至上主義者(組織)たちが、ネットやSNSを通じて連絡を取り合い、お互いを高め合い、連帯感や一体感など共同体意識を高めていることは事実である。まったく他者と接点がない単独犯であっても、過去の事件をニュースで知り、また、ネット上に溢れる過激な思想に共鳴するなどしている。まさに、9.11テロ以降、アルカイダやイスラム国(IS)が推奨してきた「インスパイア・テロリズム(inspired terrorism)」が極右テロの世界でも生じているのである。

 今年は去年以上に極右テロが大きな問題になるかもしれない。それはISなどのジハーディストを思想的に助長することになる。テロの負の連鎖はなんともしても避けなければならない。

Text by 和田大樹