励まし合い、クルーに感謝……隔離クルーズ船から発信する乗客たち

Jae C. Hong / AP Photo

◆船上生活を発信 クルーへの感謝も
 退屈な2週間を切り抜けるため、船内の状況や自分の生活の様子をソーシャルメディアで発信する人々もいる。日々の食事の画像にミニ批評をつけてツイッターに投稿するアメリカ人乗客のマシュー・スミス氏には、乗客も含め多くのフォロワーができた。1日に少なくとも2杯のコーヒーを獲得するという試みを成功させており、これもファンを楽しませいるという。旅行が台無しになっているにもかかわらず、ポジティブな態度を維持しているのが人気の理由らしい。スミス氏は船内の食事はおいしく、病院での隔離より船のほうがいいとツイートし、「隔離が終わったら、俺を船から引きずり降ろさないといけなくなるかも」とお茶目なコメントを残している(同上)。

 NPRによれば、プリンセス・クルーズではオフィシャルのハッシュタグを用意している。各自の経験をシェアするときに、これを使用することが奨励されており、長時間勤務でがんばるクルーへの感謝と励ましの言葉が投稿されているという。なかには狭い部屋で一緒に寝泊まりする乗組員が、ウイルスに感染してしまうのではないかと心配するコメントもあった。事実乗組員のなかから感染者が出ているため、乗客の懸念が現実化しているのは残念な限りだ。

◆増える感染者、精神的疲労も
 ソーシャルメディアのおかげで、多くの乗客が隔離された状況に置かれながらも他者とのコミュニケーションが取れるのは救いだが、グループによってはクルーズ船に関するネガティブな議論も多く、あまり見ないという人もいるという(NPR)。個人のソーシャルメディアでも、辛らつなコメントや批判を繰り返している人も見られる。

 ブリティッシュコロンビア大学の心理学教授で、乗客の一人でもあるスティーブン・テーラー氏は、すでに隔離生活に苦痛を訴える人も多く、時間が立つほど不満や心配、イライラが募るとし、手に負えない行動に出る人が増えるのではないかと心配している(ナショナル・ポスト紙)。

 NPRによれば、日々感染者は増えており、隔離期間が終わっても感染者に濃厚接触した人はさらなる隔離が必要という声も防疫官の間で出ているという。隔離措置が終わるのは19日だが、乗客の心配はその後も消えそうにない。

Text by 山川 真智子