日本の司法が悪くても逃亡は……ゴーン氏に海外メディア厳しい目

Eugene Hoshiko / AP Photo

◆金で買った自由 逃亡には非難あり
 もっとも、同情的なオートモーティブ・ニュース紙でさえ、ゴーン氏の逃亡は利己的だとしており、逃亡自体は肯定していない。ゴーン氏の逃亡に関しては、世間は1月8日午後10時(日本時間)にゴーン氏が予定している会見を待っていると1月4日付のFTの記事は述べるが、逃亡にかかった費用に関するミステリーは残るだろうとしている。民間軍事会社を利用して日本を脱出したが、コスト的には数百万ドルかかったと見られている。2017年から2018年のゴーン氏の報酬1700万ドル(約18億4000万円)、不動産やその他の資産に行った投資を加えても、脱出費用として手元にそれだけの現金があったのは信じられないと、日産に近い人物はFTに話している。

 これに加え、ゴーン氏は世界中の法律・コミュニケーションチームにも支払いをしており、最近では100万ドル(約1億800万円)の制裁金を米証券取引委員会に支払っている。また、東京地裁にも保釈金として15億円を支払っている。FTは、かつてはしばしばその金銭的な抜け目なさから「コスト・キラー」と呼ばれたゴーン氏だが、少なくともいまは、自身の自由を勝ち取るためならいくらでも払う考えではないかと述べ、金で自由を得たという見方だ。

◆逃亡を正当化できるか? 待ち受ける試練
 フォーブス誌に寄稿した、ジャーナリストのガイ・マーティン氏は、ゴーン氏の逃亡の問題点を指摘している。やり方は見事だったが、逃亡途中、日本やトルコの法規に違反しているように見え、請け負った警備会社にも法的重荷は課せられるとしている。

 ゴーン氏に関しては、いま数多くの試練を抱えているが、そのなかでも最も重要なのは、尋常ではない違法な逃亡の話を、日産との戦いの話にすり替えることだろうと述べる。記者会見は最初の発言の機会となり、自身へのクーデターを画策した人々の名前を公表すると米メディアに話したとされているが、この戦略がゴーン氏の逃亡に怒りを覚えている日本政府や司法制度にどう影響を与えるのか定かではないと同氏は述べる。

 ゴーン氏は会見をすることで、自身の自由のための行為を正当化する義務を感じているようだとマーティン氏は見ている。世論という法廷が重要なのは否定できないが、クーデターの首謀者の名前を聞いたからといって、日本の検察がゴーン氏の起訴を取り消し、ゴーン氏を追放しようとした人々の捜査に突然着手するわけでもない。複雑な法のマトリックスのなかでの戦略的手段として、保釈中に行方をくらますのは通常勧められないとしている。

 逃亡先のレバノンは、周辺国の情勢や国内の政府への抗議運動の高まりで苦しんでいる。FTによれば、政府関係者のなかには日本のような主要国とのいざこざはごめんだという意見もあり、ゴーン氏への政治的な同情は限定的だという。マーティン氏は、ゴーン氏は成功したエグゼクティブだったが、今後は新しい自分の立場を確立する必要に迫られており、彼の逃亡と同じぐらいのリスクを背負うことになったと述べている。

Text by 山川 真智子

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