ハイテク企業の実験場と化すサンフランシスコ「許可を取るように」

AP Photo /Jeff Chiu

 サンフランシスコの街は、最新の配送技術や輸送アプリの試験運用の場として頻繁に使われている。この現実にうんざりした市のリーダーたちは、公共の場で新たな技術のアイデアを試す前に許可を得るよう、企業側に求めている。

 昨年12月17日に管理委員会が満場一致で可決したこの法案の支持者たちは、このような法案の可決はアメリカでは初めてだと語る。管理委員会によると、サンフランシスコの大手ハイテク企業の拠点が集中する都市部では法整備が大幅に遅れている一方で、新たなテクノロジーの突然の到来にはすばやく順応しているという。昨年、一夜にして登場した所定の管理場所を持たない何百台もの電動スクーターが好例だ。

 アメリカでは、電動スクーターが急増したため、都市部に住む人々からの苦情が全国から寄せられるようになった。

 ハイテク企業は、市民に高報酬の仕事を潤沢に与え、サンフランシスコが壮大な構想実現の舞台であるとの評判を確立した。しかし、地元企業のエアビーアンドビー、リフト、およびウーバーの成功は、市街地のさらなる混雑を招き、住宅不足の悪化に追い打ちをかけたため、一部の住民からは忌み嫌われている。

「私は、イノベーションとテクノロジーを支持する。しかし、住民たちはモルモットではない。我々の公共インフラは、誰でも飛び入り歓迎というわけではない」と、今回の法案を提出した管理委員会の代表を務めるノーマン・イー氏は語る。

 オフィス・オブ・エマージング・テクノロジーは、サンフランシスコの公共スペースで製品テストを実施したいと考える起業家たちのワンストップショップ的な存在として機能している。同社は、公共の場で新たに導入予定のテクノロジーを監督する役割を果たしており、「純粋に公共の利益」であると宣言しない限り、試験運用が許可されることはない。

 企業が申請した企画案を評価するために、どのような基準が使用されているのかは明確ではない。しかし、試験運用に際してデータを共有し、公共の安全とプライバシーを確保し、雇用の創出を促進しようとする企業は許可が下りやすい模様だ。

 イー氏は、「歩道もしくはほかの公共インフラ上で運用されるホバーボード、配送用ドローン、およびデータ収集用デバイスは規制の対象になるだろう」と語る。同氏によると、ローテクなポゴスティックを移動手段として推進したい企業もあるという。この企業の抱く概念はイー氏を震撼させた。

「想像できるだろうか? 街中に1万台ものポゴスティックが投入されてしまう前に、待ったをかけなければならない」

 公共政策シンクタンクであるブルッキングス研究所の経済学フェロー、アーロン・クライン氏は、当局者は公共インフラを保護し、「公共スペースは思いのままに開拓できる『ワイルドウエスト』ではない」というメッセージを、コーディング能力やすばらしいアイデアを持つハイテク企業のすべての人々に届ける義務があると語る。

 また、同氏は、「その一方で、あまりにも多すぎる地方当局の統制や、面倒な手続きを経て合格しなければならない厳しい審査は、発展を阻もうとする既得権益によって容易に操作されてしまいかねない」とも指摘する。

 サンフランシスコの政治戦略家であるジョン・ゴリンガー氏によると、政治家たちは10年近くも企業のやりたい放題を黙認し、現在は市役所が支配権を握っていると語る。企業が優遇されたことによって一部の人々は富を築いたが、十分な公共の利益が市にもたらされることはなく、住宅費の高騰、ホームレスの増加、および所得の不均衡の拡大を招いた。

 ゴリンガー氏は、「こうして、サンフランシスコの生活の質と健康に対し、有害で永続的な影響を及ぼした」と主張する。

 たとえば、サンフランシスコは、市の条例が短期滞在を禁止しているにもかかわらず、エアビーアンドビーが短期の宿泊施設レンタルの広告を開始してから2014年までの数年間、同社の規制に乗り出さなかった。当局は、さまざまな問題のなかでもとりわけ、都市の渋滞、ユーザーデータの取り扱い、およびドライバーへの報酬についてウーバーおよびリフトと争っている。

「配車サービスを提供するこれらの運送会社は、州に監視されているため、市当局の規制対象にはできないだろう」とイー氏の助手を務めるエリカ・マイバウム氏は語る。マイバウム氏は、個人の家屋や私有財産が絡むため、市当局はエアビーアンドビーが提供するようなサービスも規制の対象としないだろうと話す。

 ヒューレットパッカードのデビッド・パッカード氏が設立したシリコンバレーリーダーシップグループは、「規制がイノベーションを抑止し、企業に負担をかける」として、今回の法案に反対している。

 しかし、エンジェル投資家のロン・コンウェイ氏が設立した技術団体エスエフ・シティはこの法案を後方支援している。同氏は、より厳格な規制を支持する人々にとって昔からの宿敵だ。

 エスエフ・シティの事務局長であるジェニファー・ストイコビッチ氏は、「我々は、法案を作成するために業界と対立しあうのではない。ともに協力しあって進めるこのアプローチは、サンフランシスコ市が成功するために必要なリーダーシップの一つだ」と語る。

 食品配達サービスを提供するポストメイツの副社長であり、法案を作成したワーキンググループのメンバーでもあるヴィクラム・アイヤー氏は、11月に行われた公聴会で、官民間で繰り広げられた頭突きの争いの日々は終了したと言う。

 アイヤー氏は、「政府はテクノロジーに対して共感を示す必要がある。テクノロジー企業は、政府に対してよりいっそうの共感を抱かなければならない」と述べている。

 イー氏は、規制を設けるというアイデアを2年近く前に思いついていた。2018年、所定の管理場所を持たない数百台もの電動スクーターが街中の歩道にあふれるほど登場した後、このアイデアはさらに緊急性を要した。電動スクーターの乗り心地を楽しむ人々もいたが、電動スクーターにまとわりつかれてまっすぐ歩くこともできず、いらだちを覚える人々もいた。

 市は、当局が規制するまでスクーターの禁止に踏み切った。

By JANIE HAR Associated Press
Translated by ka28310 via Conyac

Text by AP

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