観光客に飲まれる古都プラハ 酔客の無法 押し出される地元民

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◆非常識極まりない、嫌われるチープな観光客
 ガーディアン紙によれば、プラハを訪れる観光客には、気楽な楽しみを求めて来る人が多いという。観光客を目当てにした商売は町中に広がり、土産物店、両替商などが立ち並ぶ。毒々しい色で塗られたマッサージパーラーや、観光客に写真を撮らせるパンダの格好をしたダンサーなど、古都プラハに似つかわしくないものも多いという。

 プラハではビールの価格が安く、観光客のお目当ての一つだという。「ビア・バイク」という客にペダルを踏ませてビールを好きなだけ飲ませるツアーが人気だが、大音量の音楽を垂れ流し、交通の邪魔になっているという。途中で銅像に向かって立小便をしたり、反共産主義と自由の象徴でもあった「レノンウォール」にいたずら書きをしたりする者までおり、住民から苦情が出ている。

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 夜になると複数のバーをめぐるはしご酒ツアーが始まる。住宅街では夜10時以降は法律で静かにすることが定められているが、酔った観光客の声は大きくなるばかりで、住民は夏でも窓を閉めてしまうという。飲酒がらみの観光のおかげで静かな町の印象は劇的に変わり、耐えられず引っ越す住民も多いとガーディアン紙は述べている。

 市も対策に乗り出しており、ロイターによれば、パンダの着ぐるみはすでに禁止、「ビア・バイク」は来シーズンから禁止の予定だという。また「夜の市長」を任命するなどし、夜中の騒音の取り締まりに乗り出している。市長は、今後はビジネスミーティングなどを含め、お金を落とす観光客を取り込みたいとしており、現在のディズニーランドのような状況を何とかしたいとロイターに話している。

◆町から住人が消える 民泊の猛威
 オーバーツーリズムの最も深刻な問題は宿泊施設の不足だとロイターは指摘し、多くのアパートが事務所や短期の宿泊施設に変えられているとする。ラジオ・プラハのウェブサイトは、コンサルタント会社のデロイトが行った調査結果を紹介する。Airbnbなどの宿泊プラットフォームを通じて貸し出されているプラハのアパートの8割にはオーナーは住んでおらず、完全に営利目的だった。さらに驚いたことには、約3分の2のオーナーが、2つ以上のアパートを所有しており、これらのアパートの半数は年間150日以上貸し出されているという。

 実は2016年から2018年の間に、プラハのホテルの収容能力は1.4%しか増加していない。そのため需要がAirbnbなどに吸収されている。4つ星ホテルの半額近くでAirbnbの部屋が提供されているということで、安さも魅力的だ。今後もホテル建設が増えなければ、民泊の需要はさらに高まるだろうと見られている。民泊用アパートの急増でプラハの中心部では人口が減っており、今後さらに広い地域から住民が追い出されることになりそうだとデロイトは結論づけている。

Text by 山川 真智子