eスポーツで学位、英米の大学が学科を開設 急成長する業界のニーズに対応

AP Photo / Kelvin Chan 

 真新しく小綺麗なデジタルスタジオで行われている授業で、学生たちがシューティングゲームをプレイしている。eスポーツで学位を取得できる大学に入学した学生たちがオリエンテーションを受けているのだ。

 学生たちが在籍するのは、イギリスのスタッフォードシャー大学だ。同大学は、アメリカやイギリスで急成長しているeスポーツ業界のニーズの活用を目指すプログラムが開設されている大学の一つである。

 リアン・チャップマン氏(18)によると、彼の両親は、複数人がビデオゲームで競い合うeスポーツを学ぶことに「当初、疑いを持っていた」という。

                                                                                                                 

「でもいまでは、この業界の成長が著しく、成長ペースも速いことを理解してくれました。飛び込むのに値する素晴らしい業界だから、両親は賛成してくれています」と、ラボで最も人気のあるeスポーツゲーム「カウンターストライク」をほかの学生たちとプレイしながら話してくれた。

 スタッフォードシャー大学は昨年、eスポーツプログラムで学士課程と修士課程を開設した。学生は主に業界に特化したマーケティングや経営スキルを学ぶ。今秋にはロンドンでもプログラムを設ける予定だ。ほかにもイギリスのチチェスター大学、アメリカ・バージニア州のシェナンドー大学、マサチューセッツ州のベッカーカレッジ、オハイオ州立大学などでもeスポーツの学位を取得できる課程が開始された。eスポーツが力強い成長を見せているアジアでは、シンガポールと中国で同様の課程を提供している。

 調査機関ニューズーによると、世界のeスポーツ市場は、昨年の2億3,000万ドルから今年は11億ドルに拡大すると予想されている。スポンサー契約、物販、チケット販売が押し上げ要因だという。また、多くのファンがツイッチ(Twitch)やマイクロソフトのミクサー(Mixer)といったライブストリーミングのプラットフォームを視聴しているため、世界全体でみたeスポーツのオーディエンス数は今年約4億5,400万人に達すると予想されている。

 eスポーツのトーナメント戦は社会現象になっており、その規模とスケールにおいて既存のスポーツ競技に引けを取らないほどになった。大きなイベントは数千人ものファンが観戦するアリーナで開催される。そこでは有名なプロのゲーマーたちが魅力的な賞金をかけて競技する。

 北アメリカ、ヨーロッパ、アジアにはeスポーツのリーグがフランチャイズを構えている。オンラインゲーム「フォートナイト」のスーパースターで、「ニンジャ」の名で知られるタイラー・ブレヴィンスなどの有名プレーヤーの場合、賞金やライブストリーミングの取引で数百万ドルを稼ぐといわれている。11月にはフィリピンの「東南アジア競技大会」でメダルをかけたeスポーツのイベントが開催される予定だ。

 アメリカの大学ではここ数年、学生レベルのeスポーツ競技を開催してきた。一部の大学はさらに進んでeスポーツの教育課程を新たに設け始めている。業界のブームによって、eスポーツトーナメントを熟知するノウハウを理解するプロが求められているためである。

 ニッチな課程の誕生は経済環境の変化を一部反映しているが、「学位を取れば誰かが仕事を提供してくれることを、親と生徒に伝える必要性」の表れでもある。その内容には、「高額な授業料や学生が負担するローンも含まれる」とペンシルバニア大学高等教育研究所ディレクターのジョニ・フィニー氏は話している。

 同氏は、一部の課程は専門性が高すぎることと、入学者の落ち込みを補うために新たな課程を設けているのではないかという点を懸念している。

「大学教員が前向きな気持ちで、『このビジネスの学位ではこのような仕事をカバーしています』と言えるかどうかにかかっています。『ある仕事のカテゴリーに入る学位を提供しています』では十分でないのです」とフィニー氏は言う。

 ベッカーカレッジは昨年のソフトリリースを経て、今月から正式にeスポーツマネジメントの理学士課程を開設した。

「いまや、地下で子供たちがゲームをしている次元とは違うのです」と同カレッジにあるデザイン・テクノロジー学部のアラン・リタッコ学部長は話す。eスポーツのトッププレーヤーともなると、その収入はゴルフやテニスなど既存スポーツで最高選手が稼ぐ金額とほぼ変わらない。

 各大学が強調しているのは、教育課程は単なるゲームプレイではないということだ。

「多くの人は、eスポーツの背後にある業界のことを知らないのです」とスタッフォードシャー大学デジタル研究所ロンドンのマット・ハックスレー講師は言う。イギリスのバーミンガム近くに立地する同大学は、この研究所をテックハブ「ヒア・イースト」内に設けたため、学生たちはロンドンにアクセスしやすくなった。

 トーナメントの運営について講義を行っている同氏によると、eスポーツの学習とスポーツ管理の学習は同じだという。

「サッカーのディレクターになるために勉強するといっても、サッカーを練習するわけではないでしょう。選手の移籍方法、スタジアムの運営その他あらゆる業務についてのビジネスを学ぶのです」と説明する。

 チチェスター大学では、課程の上級講師にR2Kとして知られる元プロのゲーマー、ラムス・シング氏を招聘した。授業の一環としてFIFAや「リーグ・オブ・レジェンド」といったゲームをプレイすることもある。

 オハイオ州立大学では、eスポーツとゲーム研究の学士課程を開始した。ゲームを健康や医療に応用することになるだろう。

「まだ実績のない学位を取得するために、学生や両親が授業料を支払わなくてはならない」という不安を軽減することに大学は主眼を置いている。イギリスでの標準的な年間授業料は年9,250ポンド(約1万1,430ドル)に対し、アメリカでは年3万6,000ドルかかる。

「常にリスクはつきものですが、まったく後悔していません。この業界は、いまの時点では右肩上がりです」と、スタッフォードシャー大学で学び始めたエリス・セリア氏(26)は話す。

By KELVIN CHAN AP Business Writer
Translated by Conyac

Text by AP