レズビアン、独身女性にも体外受精の権利を 仏で新法案

AP Photo / Thibault Camus

 フランス国内で、生殖補助医療を受ける権利を認める法案が初めて提出された。フランスの独身女性やレズビアンは、医師の処置を受けて妊娠を試みるために、外国へ行く必要が今後なくなるかもしれない。

 エマニュエル・マクロン大統領率いる現政権によって作成された生命倫理法改正案には、人工授精や体外受精(IVF)など生殖補助医療の利用対象を拡大する文言が盛り込まれた。従来の法律では、不妊症の男女カップルにその対象が制限されている。

 フランス政府は、この法案は社会の変化に対応したものであると述べているが、9月に始まる下院での審議では論争が起きることが必至である。2013年5月、フランスで同性婚が合法化され、同性婚カップルが共同で養子を取ることが認められると、パリでは数十万人規模の抗議デモが行われた。

                                                                                                                 

 改正案では、上限年齢はまだ定められていないものの、すべての女性を対象に、1度の妊娠について4回までの生殖補助医療にかかる費用を、国の医療保険制度で補うことを求めている。

 また精子提供者の情報について、従来の法律では完全匿名が原則とされているが、改正案では、提供精子で生まれた子供が18歳になった時点で情報開示を求めることができる。

 一方で、代理母出産の禁止は従来の法律のまま維持される。

 2013年にフランスで同性婚が合法化された後、国内のLGBT権利擁護団体は、改正案の可決に向けて働きかけた。レズビアンや独身女性に体外受精などの生殖補助医療を受ける権利を認めることで、母親や赤ちゃんがフランスの法律制度に触れることなく、国の手厚い医療制度を利用できるようになるという。

 ゲイ・レズビアンの親と次世代の親の会(Association of Gay and Lesbian Parents and Future Parents)は声明の中で、「これはまさに、性的指向を問わず、すべてのフランス女性国民の平等を実現する法案なのです」と述べている。

 改正案により父親のいない子供が増えると主張する保守系20団体は、10月に抗議行動を計画している。妊娠するための手段が多様化し、その結果として代理懐胎の合法化もあり得ると懸念を抱く。

「新しい権利を確立していると言いつつ、一方で子供たちが被る影響を意図的に問題視しないことは、極めて不快で卑劣なやり方です」と、反対派の団体、全ての人のための抗議運動(Demonstration for Everyone)で副代表を務めるアルベリック・デュモン氏は主張する。

 現在、EU加盟国28ヶ国中18ヶ国でレズビアンのカップルもしくは独身女性、またはその両方に生殖補助医療を受ける権利が認められている。

 国内で医療措置を受けることができず、金銭的余裕のあるフランス人女性は、隣国のスペインやベルギーへ渡航することが多い。体外受精1回あたりの費用は数千ユーロ(数十万円)である。

 フランス南部の都市マルセイユに住むヴァージニー氏(36)は、2019年6月、妻のセシール氏と結婚した。子供を持つことを望むこの女性カップルは、法改正をめぐる議会での議論が数ヶ月続くことを危惧し、法案の可決を待たないことに決めた。

 その代わりに、1,000ユーロ(約12万円)でデンマークより送付されるドナー精子を使用することにしている。フランスでは違法とされる方法であるため、赤ちゃんを身ごもる予定のヴァージニーは、身元が明かされないように姓を名乗らなかった。

「まずドナー精子を試してみてうまくいかなければ、新たな法律に沿った手段を考えています」とAP通信に話す。

 ヴァージニー氏は、違法なことをするのはつらいと話す。そして、改正案によって救われるフランス人女性は多いと考える。しかし同時に、この法案によって反同性愛者による反発が引き起こされる可能性や、同性婚カップルへ処置を施すことを渋る医療従事者と対峙することについて不安を抱いている。

 フランス南部の都市モンペリエに住むアマンディーヌ・ゼヴォリノ氏(35)と妻のカミーユ氏は、1年半前に結婚した。ゼヴォリノ氏は妊娠のためにスペインを訪れたが、精子提供を受ける際の、匿名性と商業主義的な側面に居心地の悪さを感じたという。

 そして最終的に、精子を提供することに同意した友人の助けを借り、自宅で授精を行うことに決めた。

「法的な拘束力が何もないことは承知しているが、契約を交わしました。うまくいけば、子供はどのようにして自分がこの世界にやって来たのかを知るでしょう」とセヴォリノ氏は話す。

 それでもやはり、フランスの医療関係者に真実を話すことをためらっているという。「嘘をつかざるを得ない」状況なのだと肩を落とす。

 ゼヴォリノ氏は、議会での議論により政治的緊張が引き起こされると考える一方で、新たな法律の下で、レズビアンやシングルマザーがフランス社会により受け入れられるようになることを期待している。

「フランスでは、このような問題についてはいつも、一度法案が可決されるとその法律が社会の信念になるのです」

By SYLVIE CORBET Associated Press
Translated by Mana Ishizuki

Text by AP