100万人抗議でも民意は勝てず……中国に飲み込まれる香港民主主義

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 9日、中国本土への犯罪容疑者の移送を可能にする、「逃亡犯条例」の改正に反対する市民のデモが香港で行われた。参加者数は100万人ともいわれ、1997年に中国に返還されて以来の大規模デモとなった。キャリー・ラム行政長官は、審議を進めると発言しており、このままいけば改正案は可決する見込みだ。中国の影響力が強まるなか、香港の自由と民主主義が脅かされている。

◆中国の思うつぼ? 改正案は自由に対する脅威
 香港は刑事事件の容疑者の身柄引き渡し条約を20ヶ国と結んでいるが、「逃亡犯条例」が改正されれば、香港から中国本土、台湾、マカオへの引き渡しも認められることになる。

 通常は香港政府を支持するビジネス界や法律家から、学生、民主活動家、宗教団体までが、この改正案に反対している。香港の法的自治をさらに侵食すること、また中国おいては基本的司法の保護でさえも保障が困難であることを懸念しているという。

 民主主義を支持する香港の活動家たちは、改正は中国の政策を批判する人々の避難先という香港の地位を脅かすものだと非難している。香港は、国内外の非政府組織やジャーナリストが、中国本土ではできない活動を行える自由な場所だ。理論的には、彼らが政治的罪で中国へ引き渡されることはないが、中国の言いなりである香港政府が、都合のいい理由をでっちあげて彼らを中国に逮捕させてしまうことは想像に難くないとウェブ誌『Slate』は指摘している。

Text by 山川 真智子