インド、人気ゲーム『PUBG』禁止の動き 一部都市や大学ではすでに禁止、逮捕者も

AP Photo / Mahesh Kumar A

 インド南部で先週、1人の少年が自殺した。人気のオンラインゲームを巡り母親が叱責した後の出来事だった。以降、国中でこのゲームを禁止すべきかどうかの論争が起きている。

 自殺した16歳の少年の父親は、オンラインゲーム「プレイヤーアンノウンズ バトルグラウンズ(略称PUBG)」を禁止すべきだと述べている。インド国内紙の報道によると、少年は英語試験の勉強をせずゲームで時間を無駄にしていると親から叱られ、ハイデラバードの自宅の屋上換気扇で首を吊った。

 インドで論争の的になっているのは、文化規範だ。子供たちの多くは自立する年代になるまで両親と同居しているが、保護者は子供に学業や仕事につながることに専念してほしいと思っている。

                                                                                                                 

 規制擁護派の見方は、ゲームがあると極度に気が散るというものだ。プレス・トラスト・オブ・インディア紙の3月の報道によると、マハーラーシュトラ州の線路近くでスマホゲームをしていた20代の男性2人が、やってきた電車にはねられて死亡した。

 PUBGは韓国メーカーが開発したサバイバルゲームで、プレーヤーはある島に放りこまれた後、ライバルと死闘を演じなくてはならない。2017年のローンチ以降、このゲームはパソコン、ゲーム専用機、モバイルのプラットフォームで世界中から巨大なファン層を集めている。昨年12月までの携帯ダウンロード数だけで2億回に及ぶ。

 インド中心部にあるグジャラート州にあるいくつかの都市では、このゲームはすでに禁止扱いとなっている。プレーヤーは攻撃的になり、学生が勉強しなくなるという懸念が表明されていた。その後、同州に住む20人ほどの若者が、規則違反で逮捕されている。

 同州におけるPUBGへの対応は、学期末の4月30日まで当該ゲームをしないよう州の教育関連部局が学校に指導する形で1月から始まった。インドでPUBGが禁止されたのはいまのところグジャラート州だけだが、他地域の関係当局も同様の措置を取るよう求めている。

 インド南部タミル・ナードゥ州にあるベロール工科大学も、昨年12月にこのゲームを禁止した。学生生活担当の責任者が学生向けに出した声明の中で「(ゲームにより)キャンパス全体の雰囲気が損なわれる」と説明している。

 プレス・トラスト・オブ・インディア紙の報道によると、2月に実施された条例をめぐる審議の際、ゴア州のロハン・カウンテIT担当大臣は、このゲームを「あらゆる家庭に潜む悪霊」と呼んだ。

 グジャラート州では3月、複数の地区で禁止措置が出され、PUBGゲーマーに対する当局の対応が始まった。

 ハイデラバードで子供の権利を擁護する団体を率いるアチュタ・ラーオ氏は、PUBGをほぼ連続4日間プレイした後に死亡した21歳男性の事例を引用しつつ、国家機関「子供の権利保護に関する国内委員会」にあてた書簡で、市当局がゲームを禁止する対策を取るよう促した。

「子供はゲーム中毒になり、精神を乱されてしまう。残酷な画像が心のなかに入り込み、悪い影響を及ぼす。全国規模で規制することによってのみ、この状況を改善できる」とラーオ氏はAP通信社に語る。

 ハイデラバードの臨床心理学者ラディカ・アチャルヤ博士もゲーム禁止に賛同する。何時間もゲームするために部屋に閉じこもり、両親が邪魔をしたら殺すと脅した10代の患者を例に挙げた。「PUBGは若い人の感覚を鈍らせ、情緒の発展を阻害する。成功を暴力と関連づけること、痛みを与えることがすべてなのだ。子供、思春期の若者、さらには成人にきわめて悪影響がある」。

 熱烈なゲーム愛好家のアニルッダ・イサーン(23)によると、このゲームは「極度に中毒になりやすく」、親子喧嘩の原因になるとしながらも、ゲームをプレイするのを禁止したり、逮捕理由にしたりすべきではないと話している。

「ゲーム禁止は極論すぎる。中間の方法、または穏便な方法を取ることもできる。ビデオゲームをする人は犯罪者だと、どうして言えるだろうか。何も違法な行いはしていないのに」とイサーン氏は言う。

 インドでPUBGモバイルを配信しているテンセントは先月、「ゲームが禁止扱いとされた法的な根拠を理解しようとしている」とコメントした上で、関係当局に禁止を撤回するよう要請したいとした。中国では、PUBGモバイルは当局からの要請に従い、13歳未満の子供がアクセスできないようロック機能を設けることとなった。

 インドの禁止措置は、法的な異議申し立てに太刀打ちできないと考える識者もいる。

 ニューデリーにあるデジタル著作権擁護団体「インターネット・フリーダム・ファウンデーション」は、ゲーム禁止措置が違憲であるという司法判断と、身元を明かされていない20名ほどの被告に対する起訴の取り下げを求めて、グジャラート高等裁判所に提訴した。

「個人の自由を制限するというのなら、その論拠と法的根拠がなくてはならない。今回のような、個人から自由を奪う恣意的な禁止措置を実施するのではなく、ゲームをすると暴力や憎しみにつながるという主張を根拠とともに説明しなくてはならない」とニューデリーの弁護士カルニカ・セス氏は話している。

 タイムズ・オブ・インディア紙の報道によると、グジャラート州アフマダーバード市はすでに禁止措置を取り下げた。この件について市当局に繰り返し確認を求めているが、回答は得られていない。

 グジャラート州で逮捕された20人ほどのゲーマーは、最長6ヶ月の禁固刑が科される可能性がある。だが、逮捕者の多くを占めるグジャラート州ラージコート市のマノジ・アグラワル警察本部長は、そのような厳罰が科されるとは考えていない。「被告らは裁判所から、その地域の規則に従わなくてはならないと注意されるだろう」とアグラワル氏は話している。

By RISHABH R. JAIN and AMRIT DHILLON Associated Press
Translated by Conyac

Text by AP