危険、「裏切り者」でも肌を白くしたい……有色人種女性に広がるブーム

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◆アジアでも色白ブーム 世界に広がる美白化粧品
 WHOによれば、アフリカでは少なくとも10人に4人の女性が肌の漂白をしていると言われている(CNN)。ルワンダでの大統領直々の禁止令には、「肌漂白は犯罪ではない」「個人的な問題だ」「権利の侵害だ」などの批判があったが(ドイチェ・ヴェレ(DW))、それも頷けるところだ。

 肌を白くするとされる美白化粧品は、アフリカ以外でも人気が高い。WHOの2004年の調査に参加した中国、マレーシア、フィリピン、韓国の女性の40%が、美白化粧品を使用していると答えた。インドでは、美白用製品が皮膚科学関連市場の61%を占めていた。

 2017年のグローバル・インダストリー・アナリスト社の調査によれば、美白用製品の市場は、2024年までに310億ドル(約3兆3480億円)を超えると見られ、アジア太平洋地域の成長が著しいとされている。

◆ブラックムーブメントも衰退? 黒い肌を誇れない女性たち
 学術ニュースサイト『カンバセーション』に寄稿したミシガン州立大学のロナルド・ホール教授は、明るい肌色を求める人々の複雑な気持ちを説明する。アフリカ系アメリカ人でもある同教授は、世界には肌の色で差別されないところはほとんどないとし、アジアにおいてでさえ、色黒は恥辱だと解説。インドでは色黒の人々は数千年にわたって差別を受けてきたし、日本では「色の白いは七難隠す」ということわざさえあると述べている。

 同氏は実はアメリカの黒人社会では、肌の色を明るくしようとする人々は軽蔑され、「黒人らしくない」と批判されるが、多くの有色人種は、内心は自分の肌の色を嫌っているという見方を示している。

 その理由の一つは、歴史の影響だ。アフリカ系奴隷とその雇い主との間にできたムラートと呼ばれる混血の人々は肌の色が薄く、白人の血を引くことで賢く見た目もよいとされたために、優遇されることが多かったとしている。また、現代に入って広告や宣伝などで、白くなめらかな肌を持つ白人女性が理想の女性像とされてしまったことも大きいとしている。結局、支配的グループである白人に好まれる限り色白が理想になるとし、明るい肌色を手に入れるため、漂白化粧品を使うアフリカ系の女性が増えるとしている。ただし、自分が人種的裏切り者と思われるのが怖いので、漂白の話題はタブーとなっているとし、ある意味日本やインドより厳しいとしている。

 1960年代にはアフリカ系アメリカ人の間で「black is beautiful(黒は美しい)」ムーブメントが起こったが、DWは、近年ではアフリカ系セレブたちは、肌色を明るくすることを美のお手入れ習慣に加えるようになったと指摘する。DWがインタビューしたルワンダの薬剤師は、漂白化粧品を最も使うのは若者だと述べており、その危険性にも気づいていないと述べている。美白は世界的トレンドのようだが、白い肌が良いという考えが続く限り、危険な漂白化粧品の使用はなくならないのかもしれない。

Text by 山川 真智子