シンガポール俳優が軍事訓練で怪我、その後死亡 当面訓練縮小へ

AP Photo / Yong Teck Lim

 シンガポール軍は1月24日、シンガポール国外での予備役訓練中に人気俳優が負傷しその後死亡した事故を受けて、今後は訓練プログラムの期間、強度、頻度を減らす予定だと発表した。

 シンガポールの俳優アロイシャス・パン氏は、1月19日、ニュージーランドでの軍事訓練中に大型榴弾砲の修理作業を行っていたところ、下降してきた砲身に腹部と胸部を押し潰された。

 シンガポール国防省によると、パン氏は損傷した複数の臓器の修復手術を受け、生命維持装置でかろうじて命をつないでいたが、その後23日になってニュージーランドのワイカト病院で死亡した。28歳だった。

 メルビン・オン軍司令官は会見のなかで、シンガポール軍は今後数週間以内に訓練プログラムの内容を見直すと発言している。

 オン司令官はシンガポールのザ・ストレーツ・タイムズ紙に対して、「今回の訓練時間短縮は、問題が完全に解決されるまで行われます。私たちは訓練が適正に行われることを望んでおり、すべての活動が安全に、いかなるときも適正に行われるよう変えていきたいと考えています」とコメントしている。

 シンガポールでは、若者たちが軍や警察、市民防衛の分野で奉仕することが義務づけられている。その大多数は、2年間の兵役期間を満了したのち、その後も毎年行われる定例訓練に参加することを求められる。その例に漏れず、パン氏も正規の兵役期間を満了していた。パン氏は軍では兵器技師を務め、階級は伍長だった。

 事故の知らせを受けたパン氏の家族は、ニュージーランドに飛んだ。しかし、結局パン氏と言葉を交わすことは叶わなかったと、パン氏の兄であるケニー氏は語る。

「弟のアロイシャスは私たち家族の宝でした。家族のなかでは一番年下で、皆に一番愛されていました。また弟も、家族を最大限サポートし、家族みんなを精一杯愛してくれました」

 葬儀の準備が進められるなか、パン氏の遺族は、極力早く遺体が母国に送還されることを希望していた。

 生前、ニュージーランドへの出発前に、パン氏はツイッターに次のように投稿している。

「不本意ながら、2019年は年明け早々、3週間の予備役訓練のためニュージーランドに飛ぶことになります。でもまたすぐ、仕事に復帰します」

 シンガポール軍は、パン氏が負傷するに至った経緯を調査するため、独立調査委員会を招集すると表明している。

 パン氏は事故当時、シンガポール軍の自走榴弾砲(小型戦車のような外観の戦闘車両)に関わる軍務を行っていた。ニュージーランド北島のワイオウル演習場で行われたこの実弾射撃演習は、ニュージーランド軍の主催で毎年開かれている。

 シンガポールにあるパン氏の所属事務所「ヌーントーク・メディア」は、パン氏の写真をフェイスブックに投稿し、「親愛なるアロイシャス、誰もがあなたの死を惜しむでしょう」と綴っている。

 他の俳優たちも、続々とパン氏に弔意を表した。俳優のシェイン・パウ・シュンピン氏はインスタグラムに次のように書き込んでいる。

「私にとってあなたは、血を分けた兄弟も同然でした。もしまた生まれ変わっても、ずっとあなたと兄弟であり続けたい。あなたを愛しています」

 パン・ウェイチョンの名前でも知られたパン氏は、映画『ヤング・アンド・ファビュラス』(2016)に出演したほか、『ザ・トゥルース・シーカーズ』(2016)、『C.L.I.F』(2011)をはじめとするテレビシリーズでも活躍した。

By NICK PERRY and ANNABELLE LIANG, Associated Press
Translated by Conyac

Text by AP