アメリカのクリスマスツリー、生木からプラスチックへ 農家には危機感

AP Photo / Gillian Flaccus

 ロサ・ヴィラレアル氏の3人の幼い息子たちが、クリスマスツリーの農場を野うさぎのようにジャンプし、駆け回った。彼らは明らかに興奮した様子で、モミの木の間を競うように走った。両親はそれぞれ2歳、4歳、6歳の息子に、今年のクリスマスツリーにする生木を選ばせることで、この新しい習慣が長く記憶に残るよう願っているのだ。

「私は、大きなツリーにお母さんが飾り付けをし、小さなツリーに子どもたちが飾り付けをするこのビデオを観ました」と彼女は話す。その間夫のジェイソン・ヒメイネス氏は、息子が同じくらいの背丈の小さなツリーの横でポーズを取る姿を写真に収めていた。

 アメリカ中のクリスマスツリー農家は、ヴィラレアル氏のような家族が少なくなっていることに危機感を覚えている。フェイクツリーは、かつては本物のモミの木のお粗末な模造品に過ぎなかったが、今ではあまりに精巧なため本物と見分けがつかないほどだ。さらにフェイクツリーは、ライトの飾りをあらかじめ巻き付けておくことができるという利点があり、折りたたんでしまっておくことも容易だ。

                                                                                                                 

 クリスマスツリーを飾るアメリカ人の75〜80%は、今やフェイクツリーを飾っている。さらにフェイクツリーの市場は10億ドル規模で、年に4%ずつ成長しているという。フェイクツリーは毎年繰り返し使うことができるにもかかわらずだ。

 この傾向に対抗するため、クリスマスツリー農家は「クリスマスツリー振興委員会」として結集し、今年のホリデーシーズンには、ソーシャルメディアで本物のモミの木の利点を宣伝する広告キャンペーンを実施した。「クリスマスに、本物を守ろう」と呼ばれるこのキャンペーンは、クリスマスツリー農家が収穫したツリー1本ごとに15セントの寄付を行い、活動資金としている。

 これは、「ミルクある?」や「ビーフこそ、ディナーに最適」などのように、有名な農産物の広告キャンペーンを現代に活かした取り組みである。

 インスタグラムやフェイスブックでの一連のショートムービーは、完璧なツリーを探し求め、木を切り倒し、飾り付けをする現実の家族の姿を追いかけている。ターゲットは「ミレニアル世代のママ」である。なぜなら、一世代分の顧客となりうる若い成人たちがフェイクツリーをよしとする家族習慣を持つことを、ツリー農家たちはますます恐れるようになっているからだ。ミシガンに拠点を持つ、クリスマスツリー振興委員会の事務局長を務めるマーシャ・グレイ氏は次のように語っている。

「私たちが直近で話題にしているのは、ミレニアル世代です。この世代は初めての家を持ち、初めての赤ちゃんを迎える年頃。彼らは今、色々な決断を下す時なのです」そして、ビデオでは彼らのツリーを切り倒したり、ツリーの売り場からあらかじめ切られた木を購入したりするシーンを映していると付け加えた。

「彼らはこのような経験を一度もしたことがないのでは、と私達は気がつきました。そうしたやり方もあることを知らせ、彼らのクリスマスにどうやってその習慣を取り入れるかも模索しなくてはなりません」

 本物のクリスマスツリーが毎年どのくらい売れているかを正確に知ることは不可能である。情報を取りまとめるセンターや代理店がないからだ。しかし、国立クリスマスツリー協会は毎年およそ2,500万本のモミの木が収穫され、おそらくその多くは販売用だと推計している。

 フェイクツリーの大手小売業者バルサム・ヒルのCEOであり、アメリカクリスマスツリー協会の代表も務めるトーマス・マック・ハーマン氏によると、アメリカ人は年間およそ1,000万本のフェイクツリーを購入している。同協会は、会員数を明らかにしていないが、2016年には、フェイクツリーの普及を含む同協会の活動のために70,000ドルの資金を集めている。

 同氏によると、多くの人々がフェイクツリーを購入する理由として便利さ、アレルギーや火災に対し安全性が高いことなどを挙げているという。

「消費者は、感謝祭の祝日(訳注:アメリカでは11月の第4木曜日)がある週の週末からツリーを飾り始め、新年が明けてからもずっと飾っておく傾向があります。フェイクツリーの方が安全なのです」とハーマン氏は話している。

 デニス・シャックルトン氏は、フェイクツリーに切り替える前は毎年本物のツリーを購入していた。最近、同氏はカリフォルニア州バーリンガムのフェイクツリーを売るアウトレットストアで、自分と娘のためにそれぞれ新しいフェイクツリーを購入した。

「私ほど本物のツリーにわくわくする人もいないでしょう。でも、本物のツリーを車に載せ、家に運び込むのはただただ重労働なのです。それだけです」と彼女は言う。「とても不便です」

 ハーマン氏は、クリスマスツリー農家はフェイクツリーが与える業界への脅威を過大評価していると述べている。

 多くの家族が、今では本物のツリーとフェイクツリーを両方持っている。自分たちでツリーを選んで切り倒すことができる小さな家族経営のツリー農場は、依然として高い人気を誇っていると同氏は語る。

「ビジネスが縮小していることを最も感じているのは、中規模の農場だと私は思います。ますます多くの人々が、ツリーを大きい農場から仕入れているホームデポ(訳注:北米に拠点を持つ住宅リフォーム・建築資材等の小売店)で購入するか、家族経営の小さい農場で購入するようになっているからです。『フェイクツリーに取って代わられるかもしれない』という心配の声の多くは、このような中規模の農場から聞こえてきます」

 オレゴン州シルバートンにある、シルバーベルズ・ツリーファームの4代目として育ったケイシー・グローガン氏にとって、そうした不安は高くそびえ立つノーブルモミやノールマンモミのように現実的だ。オレゴン州は全米で最もクリスマスツリーを多く生産する州だが、同氏の周囲では、過去10年の間にツリー農場仲間の半分がこの職業を離れた。

 実生が成熟するまでには8年から10年かかる上、何年も先のツリーの需要を予測することは難しいとグローガン氏は語る。同氏は今年、10年前のおよそ半分の木を収穫した。2028年にも需要があると信じながら今年植えた実生の一本一本は、ギャンブルのようなものである。

「私たちの業界は、今後も生き残りたいと思っています。しかしもしみんながフェイクツリーを買うようになれば、生き残ることはできません」と、太平洋北東クリスマスツリー協会の代表も務めるグローガン氏は語る。

 そして本物のツリーを買うことについて、このように付け加えた。

「難しいことかもしれません。しかしすべて簡単なことなどありませんから。より一層の努力を重ねる価値はあるのです」

By MAGGIE MICHAEL, Associated Press
Translated by Y.Ishida

Text by AP

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