マレーシアで大規模デモ 「マレー系優遇」に足を引っ張られるマハティール首相

Yam G-Jun / AP Photo

 今年5月、15年ぶりに、かつて強力なリーダーシップにより国を発展させたマハティール首相が、93歳という高齢にもかかわらず劇的なカムバックを果たし、その動向が注目されるマレーシア。そんなマレーシアの首都クアラルンプールで8日、参加人数5万人とも5.5万人とも言われる大規模なデモが行われた。

◆劇的な新政権発足直後の大規模デモ
 デモは、マレーシア政府が、人種の違いを理由にする差別を撤廃することを定める多国間条約「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約(略称・人種差別撤廃条約/ ICERD)」へ署名すると表明したことへの抗議を目的とするもの。政府はすでに先月、署名を取りやめる旨の発表をしているにもかかわらずデモは決行された。

                                                                                                                 

 デモには、複数の汚職容疑で逮捕された前首相のナジブ・ラザクをはじめとする前与党の統一マレー国民組織(UMNO)、野党全マレーシア・イスラーム党(PAS)と、マレー人の権利を守るための民間組織Perkasaも参加したとされる。政治的なものを感じさせる集まりであったが、背後には何があるのか。

◆前与党、優遇を主張するマレー人を利用か
 多民族国家のマレーシアでは、マレー系住民が多数を占めるにもかかわらず、経済活動はマイノリティである中華系によりコントロールされてきた。富のギャップを埋めるため、マレー人を優遇する旨の条項が憲法にあり、教育、住宅政策、公職、ビジネスなどの面において、中華系にとっては不平等な扱いを強いられる社会であるといえる。

 新政権を発足させて以来、マハティール首相は、マレー系住民はこれまでのように優遇政策に甘んじるべきでないとの発言を繰り返しており、新政権の人種差別撤廃条約への署名の意思表示が一部のマレー系住民の強い反発を招き、今回の大規模なデモを引き起こした。

 AP通信が伝えたところでは、今回のデモはマハティール首相により、民主主義の一環として開催を許可され、警察による厳重な警護のもと開催され、降雨に見舞われたこともあり混乱なく終了したという。

 同記事によると、複数の汚職スキャンダルにまみれるナジブ前首相とその政権への民衆の怒りが、5月の総選挙でマハティール政権を再び誕生させたものの、マレーシアではいまだナジブを支持する層は多く、13の州で野党であるUMNOおよびPASが政権を握っている。

 そして、複数のアナリストが、ナジブとUMNOが、前与党が関与した汚職事件から注視をそらすためにデモを利用したとみているという。

Text by Tamami Persson