景観犠牲の日本方式で解決? 住宅価格の高騰に悩むロンドン、サンフランシスコ

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◆海外ではありえない? 新築の容易な日本
 アメリカの大都市とその郊外では、新築住宅に対する厳しい規制があり、これが経済力を付けた都市における住宅供給が需要に追い付かない理由だという。また、自宅の周りに集合住宅が建つことを嫌う住民が激しい反対運動をするため、需要があっても住宅を増やすことが難しいとされる。

 ハーディング記者は、氏の東京の自宅の隣の古い家がある日突然取り壊され、マンション建設工事が粛々と進んだエピソードを紹介。これがロンドンやサンフランシスコなら、景観を壊すなどの理由で近隣住民の大抗議運動が始まり、訴訟に発展し、地元の選挙結果まで変えてしまう大事件になっただろうと述べている。

 日本国憲法では財産権の保障が定められており、国民は自分の財産を自由に使うことができ、国はそれを奪ったり制限したりできない。これが、新築が容易な理由だとハーディング記者は述べる。同氏が訪ねた港区の都市計画担当者は、「建物取り壊しに法的な抑制はない」「土地の利用権は持ち主にあり、近隣住民には開発を止める権利はない」と説明している。

 さらに日本では、バブル崩壊後経済活性化のため開発規制が緩和され、都市計画が見直されたことでオフィス用地を住宅に変えることなどが容易になったとされる。もしバブルがなければ、今ごろ東京もロンドンやサンフランシスコのような住宅難を迎えていただろうと、大手不動産会社の社員はFTに話している。

                                                                                                                 

◆景観に問題あり 日本式は欧米で受け入れられるか?
 Voxは、アメリカでも住宅開発を阻む地方自治体の権限を制限し、日本のように戸建てを取り壊して集合住宅に変えることで、住宅難や価格の高騰を抑えることができると主張する。

 一方ハーディング記者は、自由に建築物を作りやすい日本の問題点は、醜い建物の乱立や安っぽい住宅建設で町の調和がなくなってしまう点だとしている。東京大学工学部都市工学科の大方潤一郎教授も、日本のシステムは自由放任主義だと指摘し、社会的・経済的変化には柔軟に対応できるが、欧州のような魅力的な街を作ることはできないと述べている(FT)。

 それでも景観に目をつむれば、スクランブル交差点、細い通り、人口密集、素晴らしい公共交通機関を備えた東京の都市生活様式は、アジアはもちろん世界の都市のモデルになるとハーディング記者は述べる。美しい景観はあっても住む場所で景色が違うロンドンやサンフランシスコよりも、貧富の差にかかわらず同じ景色を見て暮らす東京は、とりわけ公平だとしている。

Text by 山川 真智子