プラごみに戦いを挑む意外なヒーローたち 問題深刻なインドで新トレンド

ヤムナー川のほとりで暮らしながら、ごみ収集で生計を立てるナス氏(AP Photo / Altaf Qadri)

 25年以上もの間、ラム・ナス氏は、19世紀に建築された鉄橋の下、ヤムナー川のほとりで暮らし続けている。毎朝、痩せこけたナス氏は、掘っ建て小屋から何歩か歩いて、インドで最も汚染が深刻な河川のひとつであるヤムナー川の真っ黒でどろどろした水に入っていく。そして彼はごみ漁りをするのだ。

 40歳のナス氏は、プラスチックのびん、ごみ袋、捨てられた家電製品などを選り分けながら、「これが自分にできる唯一の仕事だ」と言った。

 何百人もの人たちがニューデリーのヤムナー川の堤防に暮らし、ごみを集めて生計を立てている。川から拾ったプラスチックごみをリサイクルして得られる報酬は、一日でわずか2ドルから4ドルだ。ナス氏は自分のことを環境主義者だとは考えていないが、彼は、インドの沼地を脅威にさらす大量のプラスチックごみに戦いを挑んでいる数少ないニューデリー住民の1人だ。そんな住民たちには、豪華なレストランにプラスチック製ストローの使用を止めるように説得する9年生の学生や、皿やボウルをヤシの葉から製造する会社に勤めるビジネスマンなどさまざまな人たちがいる。

                                                                                                                 

 インドは、6月5日の世界環境デーを記念日と定め、環境保護に関わる支援を可能な限り提供している。今年のテーマは「プラスチックごみによる汚染をなくそう」だ。

 ニューデリーとその周辺都市には1,500万人以上が暮らしており、インド当局や環境保護団体によると、1日におよそ17,000トンのごみが生み出されているという。この多量の悪臭を放つごみは、堆積すると50メートルもの高さに達するため、大規模なごみ処理場が必要となる。昨年、ニューデリー市街から集めた巨大なごみの山のひとつが大きく崩落し、下敷きになった2人が死亡した。

ニューデリーにあるゴミ山から集めてきたゴミを仕分ける一家(AP Photo / Altaf Qadri)

 チンタンの環境専門家であり、事業責任者でもあるチットラ・ムケルジー氏は、「我々が利便性のために使用しているこれらの製品は、廃棄されたあと、たとえ部分的にでも分解して土に還るまでに何百年もの歳月を必要とする」と語る。

 ムケルジー氏は、プラスチックごみによる汚染の抑止について人々の意識を高め、地道な努力を長年にわたり重ねてきたが、インド人民党主導の政府なら、ごみ処理と環境汚染をさらに深刻な問題としてとらえてくれるはずだ、と考えている。

 そして、「これは、官僚だけではなく、研究者や環境主義者など、さらに一歩踏み込んだ政策を実施するために関与している人たち全員の共同作業だ」と語る。

 しかし、政策とその効果は必ずしも一致しない。ニューデリーでは、薄いビニール袋の使用を禁じる命令が何度も発令された。最近の法令では、75ドルもの高額な罰金が科せられることになった。しかし、ニューデリーにあるいくつかの店で買い物をしてみれば、この禁止令がほとんど奏功していないことが明確に理解できる。

 アマルディープ・バルダン氏は、自分がこの問題の救世主になれると信じている。

 同氏の経営する会社、プラクリティーは、南インド産アレカヤシの葉から皿やボウルを製造している。その食器は、厚紙で作ったプレートのような感じであり、1週間から10日で生物分解し、土に還る、とバルダン氏は語る。同社はヤシの葉を刈り取らず、葉が地面に落ちるのを待って採取している。

「こういった全体のプロセスにおいて、我々は全く環境に害を与えていない」とバルダン氏は胸を張り、「我々は、不要となったものから何か役立つものを製造し、人々はそれを愛用し、その後、それはまた不要となり自然に還る」と語った。

 プラクリティーは当初、ヨーロッパ諸国やアメリカへ製品を輸出することで収益の大部分を得ていた一方、インドの市場でも、特に価格よりも品質を重視する若い人たちの間で環境に優しい製品を求める気運が高まっている。バルダン氏の会社であるプラクリティーは、毎年15万ドル以上の利益を生み出している。

プラクリティーが製造するエコフレンドリーな食器(AP Photo / Altaf Qadri)

 インド各地でも、環境保護のトレンドはあちこちで芽生えている。

 ニューデリーやその近郊にある高級なレストランでは、プラスチック製ストローの使用を止め、紙製のストローを使うようになっている。これは主に、学生であるアディティア・ムカルジ君が始めたキャンペーンの功績によるところが大きい。ムカルジ君は、2人の獣医師がカメの鼻に刺さったプラスチック製のストローを取り除こうとしているビデオを見ておおいに心を痛め、このキャンペーンを開始した。

「人々は、環境に対する心配を呼び掛ける子供の話に対し、より注意深く真剣に耳を傾けてくれる」とムカルジ君は言う。彼は、3月にこのキャンペーンを開始してからこれまでにレストランやホテルで50万本以上のプラスチック製ストローを紙製のものに切り替える大きな原動力となった。

 少なくとも、世界環境デーを制定したインドは、いたるところにごみが散乱している国内で、たとえ一時的にせよ環境保護を注目の話題として取り上げたことになる。6月5日の火曜日には、数多くの環境問題を議論する公式な会議がインド国内全域で開催され、ヤムナー川では清掃活動が行われたり、ショッピングモール内のフードコートでは、その日だけはプラスチック製の食器を使わないキャンペーンが実施されたりした。

 願わくは、水曜日になったらすべてが元に戻ってしまった、とならないで欲しいものだ。

By RISHABH R. JAIN, Associated Press
Translated by ka28310 via Conyac

Text by AP

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