父親の年齢が子供の寿命に影響を与える可能性 独のマウス実験

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 親の平均年齢が高齢化する現象は日本をはじめとする先進諸国で広まっている。米国科学アカデミーに寄せられた論文によると、高齢の父親から生まれた子どもの寿命は若い父親から生まれた子よりも短く、老化の兆候が顕著にあらわれるという。今年2月、マウスを使った実験で明らかとなった。

◆高齢の父親の子は老化が早い
 長い間、高齢女性の出産は子の健康に影響を与える要因と考えられてきた。しかし、疫学研究を用いた最新の調査では高齢男性の精子が子孫の健康に悪影響を及ぼす可能性が指摘されている。

                                                                                                                 

 脳神経疾患などを専門とするドイツ神経変性疾患センター(DZNE)の研究チームは「妊娠時の父親の年齢が子にどのように影響を与えるか」についてのマウス実験を行った。その結果、高齢の父親の子孫は若い父親よりも寿命が短く、多数の老化特性を持った特徴があることがわかった。チーム責任者のダン・エインガー博士は「この結論は、ヒトにも当てはまる可能性がある」と指摘する。

◆マウス実験で明らかに
 実験は、生後4ヶ月の雄のマウス(ヒト年齢18歳前後)と21ヶ月の雄のマウス(同60歳前後)の2グループにわけて行われた。両グループとも生後4ヶ月の雌マウスと交配させ、誕生した子マウスはすべて同じ条件下で発育させた。この間、両グループともに父マウスとの接触は一切ない。子マウスが生後6ヶ月および19ヶ月のとき自然老化の間で変化する生物学的パラメーターを検査した。すると、高齢マウスから生まれたほうの老化に関する遺伝形質(子孫に受け継がれる特徴)が顕著であることが判明した。さらに、高齢マウスの子は、若いマウスの子よりも寿命が2ヶ月短かった。チーム責任者は「高齢の父親の子孫が若い父親の子孫よりも早く老化したというのは間違いありません」と述べた。

◆DNAに差があるわけではない
 この結果は、全遺伝情報であるゲノムの欠陥によるものではようだ。「2つのグループのマウスを比較したとき、少なくとも本研究でとられた方法だけでは、突然変異率に重要な違いはなかった」(同博士)。しかし、研究者らは、精子が持つDNAのエピジェネティックに関する精子の変化を発見したという。エピジェネティックとは、生命の設計図とされるDNA塩基配列に依存せずに引き継がれる遺伝子の変化のことだ。エインガー博士はヒトの精子のDNAが年齢とともに変化する可能性を示唆した。

 同研究所は、「例えば自閉症や統合失調症など、統計的に若い男性の子よりも高齢男性の子には特定の疾患が頻繁に発生する」と述べる。疫学研究では父親の年齢と子の健康との関連性が多く指摘されている。少しずつ明らかになってきた加齢とDNAに関する関連性。全容の解明が期待されている。

Text by 古久澤直樹

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