なぜドイツ人はコツコツお金を貯めるのか? 歴史が教えてくれるその秘密

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 2017年には、東西統一以来最高の財政黒字を記録したドイツ。国家としても堅実だが、国民も高利回りのリスク型商品にはほとんど目を向けず、せっせと貯金に励んでいるという。なぜドイツ人は貯蓄が好きなのか? その理由を歴史から理解しようという展覧会がベルリンで開催されており、ドイツ人のお金に対する考えが垣間見える。

◆貯蓄大好きドイツ人。先の不安に備え運用も慎重
 欧州債務危機の際、ドイツは財政規律と緊縮予算に取り付かれていると陰口をたたかれたが、ほとんどのドイツ人はこの批判を拒絶するとフィナンシャル・タイムズ紙(FT)は述べる。ドイツ人は、健全な財政と高い貯蓄率を誇りにしており、社会全体がいかにして将来の危機に備えればいいかを知っているとする。

                                                                                                                 

 ドイツでは世帯の可処分所得の10%を貯蓄に回し、これはEU諸国やアメリカの2倍の額だと同紙は指摘。貯蓄率は長年にわたり安定しており、経済危機や利率の変化の影響をほとんど受けていないという。

 エコノミスト誌によれば、ドイツ国民の金融資産は2016年には5.6兆ユーロ(約728兆円)だった。そのうち2兆ユーロ(約260兆円)は低金利の普通預金や定期預金で、2.1兆ユーロ(約273兆円)は保険や退職基金に入れられている。株式に投資された額はわずか3730億ユーロ(約48兆円)で、非常に保守的な運用となっている。

◆貯蓄は個人と国家を支える。歴史からひも解く貯蓄の意義
 ウェブ誌『クオーツ』は、このようなドイツ人の堅実な貯蓄志向は偶然ではないと述べる。同誌を含むいくつかのメディアは、「貯蓄-ドイツの美徳の歴史」と題されたベルリンのドイツ歴史博物館の展覧会に、その答えがあるとしている。

 展覧会によれば、世界初の貯蓄銀行は1778年にハンブルグで誕生した。貧しい人にコツコツ貯金をさせ、子供の教育費に当てたり、年を取ったり病気をしたときの経済的負担を和らげる目的があったという。ところが、弱者救済の手段であった貯金は、別の方向へ向かう。もともとプロテスタントの節約と自制の考えがあったところに、啓蒙活動や経済の繁栄もあり、貯蓄ブームは国中に広がった。1850年には27万8000しかなかった貯蓄口座が50年後には867万にまで増加し、人口の4分の1が預金を持つこととなった。預金によって持たざる者を増やさないことで、共産主義や革命といった社会的対立を防止する国家の意図もあったという(FT)。

 1871年にドイツ帝国が誕生し、各地の貯蓄銀行が吸い上げた個人預金は、新ドイツのインフラ整備に利用された。このころから、個人の貯蓄は「国への奉仕」という意味合いがどんどん強くなり、第1次世界大戦時には、ドイツ国民は大掛かりなプロパガンダにより戦時公債を買うよう促された。戦争に負けて、ハイパーインフレ、緊縮財政の間も、貯蓄は国難と関連付けられ、ドイツ人の貯蓄精神は維持されたという。

 貯蓄は、反ユダヤのプロパガンダにも利用された。1933年にはヒトラーが権力を握り、倹約と貯蓄は愛国的義務だと国民に宣伝する。冬に備えて夏も働くミツバチをドイツ人、遊んで暮らす怠け者の昆虫をユダヤ人に例えた漫画を使い、楽をして金儲けをするユダヤ人を卑しめ、真面目なドイツ人を讃えたという。ハイパーインフレに加担したと考えられていた「取れるだけ金を取る」ユダヤ資本と、創造的な仕事による高潔な貯蓄を、ドイツ人が差別化するようになったということだ(エコノミスト誌)。第2次大戦はドイツに大きな被害をもたらしたが、FTによると、1944年9月時点でのドイツ人の貯蓄額は、ヒットラーが政権に就いたときの7倍以上になっていた。

◆国民も国家も堅実すぎ。倹約精神は変わるのか?
 第2次大戦以来、ドイツ人にとっての貯蓄の意味は変わり、社会のためよりも個人の消費のためとなった。世界金融危機を経ても貯蓄への意識は変わらず、むしろ貯めた以上のお金を使うことはできないというドイツ人の信念は増々強固になった。キャッシュレスに移行する国もある中、今でもドイツにはクレジットカードを扱わない店も多い。ドイツ人自体も現金志向で、その理由は持っている以上の金を使わなくてよいからだとエコノミスト誌は説明している。

 ドイツ政府も同様の堅実な財政運営を行い、国民の支持を集めてきた。しかし、巨額の貿易、財政黒字を持つわりには、官民ともに支出にはほとんど興味を示さないとエコノミスト誌は辛口だ。ロイターによれば、社会民主党出身のオラフ・ショルツ新財務相は、これまでの緊縮路線から方向転換するのではないかとも噂されている。変化への欲求と、どんな犠牲を払っても倹約という習慣のどちらを取るのか。いまやこの問題は、ドイツ人自身が解決すべき課題だとエコノミスト誌は述べている。

Text by 山川 真智子

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