温暖化でやせ細るホッキョクグマ 密着カメラで見えたその生態

Brian Battaile / USGS via AP

 氷上における初の生態調査となる今回の研究では、ホッキョクグマは事前の予想よりも60%以上多くのエネルギーを氷上で消費していることが判明した。パガーノ氏によれば、アラスカ北岸のボーフォート海では、およそ10日間で155マイル(250キロメートル)以上も移動したクマが数頭いた。メスのクマすべての平均では、1日に13,200カロリーを消費した。これは、カロリー消費の多い活動的な人間の女性の約6倍に相当する。

 この研究の共同執筆者であるUSGSの研究員ジョージ・ダーナー氏は、「ホッキョクグマは5〜10日ごとに少なくとも1頭のアザラシを獲る必要があります。そうでなければ、体重減少は避けられないでしょう」と述べた。

 北極海の氷は冬季に拡大し、夏には溶けて縮小する。しかし気候変動によって氷の領域が縮小し、その厚みもどんどん薄くなっているとダーナー氏は言う。

「氷が縮小するに従って、ホッキョクグマの生存基盤はどんどん切り崩されています」ダーナー氏はそのようにも述べた。

 今回の調査で得られたホッキョククマのビデオ記録によって、研究者たちは、クマの求愛や狩りの仕方を含む、クマの私生活のすべてを見ることができた。ビデオには、血の飛び交うアザラシ狩りの様子などの劇的なシーンも、クマの視点からはっきりと記録されていた。

「ビデオには、実際にクマが見ているすべての物事が映っています」とダーナー氏は語った。

 パガーノ氏によると、今回メスのクマのみが追跡対象に選ばれたのは、オスのホッキョクグマは頭が小さいわりに首が太いため、長期にわたって追跡カラーをクマに装着し続けることが難しいためだという。ブリガム・ヤング大学の生物学教授ブレイン・グリフェン氏は、今回の研究には加わっていないが、活動中でないホッキョクグマを観察したり、研究施設の中にクマを置いて数値を測定したりしていた過去のこの分野の研究と比べて、USGSの新研究は画期的だと高く評価した。

 長期的に見ると、気候変動によって「クマの体格は小型化し、出生数も減り、生存率も低下するでしょう」。グリフェン氏は電子メールの中でそう綴った。

 北極の全域において、ホッキョクグマたちが困窮している証拠を研究者たちは見つけている、とパガーノ氏は述べた。そんな中で、先月、飢餓状態のホッキョクグマのビデオが広くネット上に拡散した。しかしそこに映ったホッキョクグマはもともと北極の別のエリアから来ており、この個別のクマの窮状と地球温暖化との直接の関係はなさそうだとダーナー氏は説明した。

「ホッキョクグマにとっては、もちろん悪い状況です。しかしこれはクマだけの問題ではありません。何らかの形で私たち人間にも悪影響が及ぶ可能性があります」とダーナー氏は言及した。 「この現象は、もっともっと大きな現象の一部分に過ぎないのです」

By SETH BORENSTEIN AND MARK THIESSEN, Anchorage (AP)
Translated by Conyac

Text by AP