「女性専用車両はひどいアイデア」 英国で批判の嵐 その理由とは?

Yoshi / Flickr CC BY-2.0

 労働党の国会議員が電車などの交通機関での性犯罪対策として女性専用車両を復活させることを検討すべきと発言し、批判を浴びた。イギリスでは1977年まで女性専用車両が使われていた歴史があるが、現在大多数がその導入を否定的に捉えているようだ。
 
◆女性専用車両という発想は馬鹿げているという批判
 イギリスでは、2016年から2017年にかけて、電車内の性犯罪が1,448件に上り、これは2012年から2013年の650件に比べて大幅に増えているとイギリス鉄道警察が報告している(インデペンデント紙)。

 その報告を受け、労働党の国会議員クリス・ウィリアムソン氏は、女性専用車両が増加する性犯罪対策になるだろうと発言した。「車両内の警護を増やすことに加え、女性の通勤者に安全な場所を提供することは検討する余地がある、利用するかどうかは個人の自由だ」としている。元々は、2015年にも労働党のリーダーシップキャンペーンで即座に却下されたアイデアである。

 これに対し、同じ党の同僚から、批判の声が上がった。同じく国会議員のジェス・フィリップ氏は、この提案を「完全にひどいアイデア」であり、「対策を諦めることと同じ」と否定した。「男性は自身を抑制できないという発想に基づいた提案に男性は困惑するだろう」、「性犯罪は本能・衝動(によって起こるもの)ではない、(社会的)権力(によって起こるもの)である」と主張した。

 同じく労働党のステラ・クレイシー議員は、女性の行動を制限することが女性を安全に守ることにはならず、犯罪を常態化することにつながると言う。性犯罪が問題であるとはっきりする必要があり、「座る席の問題ではない」と、フィリップ氏に続いた。

 BBCも、労働党の前交通大臣であるアンドリュー・アドニス男爵が、女性専用車両は完全に馬鹿げた発想であり、「女性にとって極めて侮辱的」とはねつけたと報じている。きちんとふるまえない男性はとても少数なのに、女性が別の車両に追いやられるのはおかしいとしている。

◆女性専用車両の実態と交通労組の考えるありかた
 実際、日本やメキシコなど他の国では女性専用車両が普及しているところもある。活動家やその他の議員は、それは暴行の防止が不可能だと認めたも同然であり、その他の車両での犯罪増加につながった可能性があると発言している(ガーディアン紙)。

 ガーディアン紙によると、交通労組の会議書記長であるミック・ウェラン氏は、女性専用車両は答えではない、有効ではないとしている。性犯罪を常態化させることになるし、全ての電車の全ての車両を安全にするのは民営の鉄道会社の責任というのが理由である。鉄道会社が正しく人を配置すれば女性は安全だと感じるので、電車内や駅にきちんと警護を配置するよう要求している。同氏は、女性はどこでも座りたいところに座る権利があり、「性別のアパルトヘイトをイギリスの鉄道に望まない」と語る。

◆その他の団体からも批判の嵐
 BBCは、フェミニストの団体からも一様に反対されている様子を報じている。

 日常の差別の事例を記録するサイト『Everyday Sexism』のローラ・ベイツ氏は、決して車両を分けることが答えではないと話す。女性が単純にどこかに行くべきという考えによって、すでに常態化しているこの問題がさらに悪化しうるという明確なメッセージを送らなければならないとする。

 キャンペーングループ「End Violence Against Women(女性に対する暴力の終息)」は、政策が「加害者に取り組むことが何もない」との懸念を表明した。「女性が専用車両を使わないで、性犯罪に遭遇したらとがめられるのだろうか?」

 女性平等党の共同発起人のキャサリン・メイヤー氏は、2015年に労働党のリーダーが発言したときと同じく、よいアイデアではないとツイートしている。

Text by 鳴海汐

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