就寝前のテレビやゲーム、短時間なら睡眠に好影響 米研究
最新の研究により、テレビと眠りの意外な関係が明らかになった。従来、画面が放つブルーライトや興奮作用などから、寝る前の数時間はテレビやゲームの利用を避けるべきとの考え方が常識だった。しかし、注意点を守って正しい方法で利用すれば、眠りの質はかえって向上する可能性があるようだ。
◆動画やゲームなど、適度な利用で睡眠促進
今回の研究では、58人の成人の被験者たちに協力を求め、寝る前にメディアを利用してもらった。実験で被験者たちが利用したメディアは、テレビ、動画ストリーミング、ラジオ、ビデオゲーム、本などだ。結果として、寝る前にこれらのメディアを1時間程度利用するのであれば、より早く眠りにつくことができるという傾向がみられた。睡眠時間もより長くなるといい、熟睡につながりそうだ。
研究に参加したバッファロー大学芸術科学部のリンジー・ハーン准教授(コミュニケーション学)は、同大学が発表したリリース(2月9日)のなかで「ベッドに入る前にストリーミング・サービスを視聴したり、ポッドキャストを聴いたりすると、静かで落ち着きをもたらすアクティビティとなり、眠りの特性を向上する可能性がある」と述べている。研究は米デラウェア大学コミュニケーション学部のモーガン・エリソープ准教授らのチームが行い、結果がこのほど睡眠学術誌『ジャーナル・オブ・スリープ・リサーチ』の早期オンライン版に掲載された。
◆視聴しすぎは逆効果
これまでは寝る前のテレビや動画視聴は避けるべきとの意見もあったが、このように心を落ち着かせ眠りを促してくれる効果もあるようだ。ただし注意点として、ハーン准教授は「睡眠に入る直前にメディアを使うと、通常よりも早く就寝でき、全体の睡眠時間も延びるという結果につながることがわかった。ただし、使用時間が比較的短く、なおかつメッセージを送りながらSNSを閲覧するなどのマルチタスクを行っていない場合に限る」と説明している。
実験ではあまり長時間利用しすぎると逆効果というデータが出ているため、1時間程度の利用に留めるのがよいようだ。また、今回の研究ではSNS利用を対象としていないため、せわしなくSNSを閲覧したり友人たちとメッセージの送受信を続けたりした場合、また違った影響が出る可能性がある。参考までに米ニュー・アトラス誌は、別の研究結果をもとに、30分程度のSNS利用であれば睡眠の質に本質的な影響はないと紹介している。
◆自宅での測定で実態調査
寝る前のメディア利用に関しては、これまでにも多くの研究が行われてきた。しかし、利用すると睡眠に悪影響があると指摘する研究結果がある一方、それと相反する結果を示した論文もあるなど、一貫性のある結論が得られていなかった。こうした結果のブレには、ラボという特殊な環境が影響していた可能性がある。自宅とは違う環境で眠らなければならないため、被験者たちの行動パターンはどうしても通常とずれてしまうのだ。また、平常時のメディアの使用状況を、被験者の記憶に基づいて集計していたことも正確性の点で問題があった。
そこで今回の研究では、被験者それぞれの自宅において睡眠の状況を測定した。ラボでの測定よりも平常時に近い状況の把握が期待できる。さらに、メディアの使用状況は日誌に記録してもらい、記憶に頼らない正確な情報を収集している。睡眠状況を測定するため頭部にEGGと呼ばれる電極をつけて眠っていた点が通常時とは異なるが、それでもラボでの既存の研究よりは実際の眠りを正確に記録した実験といえそうだ。
これまで寝る前のメディア利用には否定的な論調もあったが、1時間程度の短時間の利用を意識すれば、眠りの質を向上してくれる可能性がありそうだ。
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