奇妙な夢は脳のトレーニングのため? AIにヒント得た新説

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◆AIに着想
 ホエル助教授は本説を提唱するにあたり、AIのしくみに着想を得た。機械学習の一種に、ディープ・ニューラル・ネットワークと呼ばれる手法がある。人間の脳のニューロンは与えられた情報を多層的に処理するが、このしくみを真似て、AIのなかに多数の処理層を設けて結果を決定するものだ。

 あるディープ・ニューラル・ネットワークの精度を向上するためには、多数のサンプルを処理させ、調整を繰り返しながら期待する結果に近づけてゆく。しかし、ここでオーバーフィット(過剰適合)という問題が発生する。限られたサンプルで繰り返し学習させた場合、既知のサンプルに対しては正しく処理できるが、それ以外の新たなサンプルに対応できなくなってしまう。

 この問題を解決するため、ディープ・ニューラル・ネットワークを訓練する際には、ノイズと呼ばれる想定外のデータをあえて混ぜ込むことがある。サンプルの一部を改変することで、想定外のデータを正しく処理する汎用性を持たせるのだ。

 ホエル助教授によるオーバーフィット脳仮説は、人間の脳にもこれと似たような概念を当てはめるものだ。ランダムな夢が日常生活で体験できる範囲を超えたノイズとなり、脳のニューロンのトレーニングに役立っているのだとホエル氏は考えている。

◆未検証だが妥当性あり
 この主張はまだ仮設段階であり、検証が必要だ。しかし、早くも大手紙の注目を浴びている。ワシントン・ポスト紙(5月14日)は、「だから、よく眠ろう。今夜あなたが過ごす風変わりなその夢の世界は、起きているときに明晰な頭脳を維持する助けになるかもしれない」と述べている。

 英スウォンジー大学睡眠研究所のマーク・ブラグローヴ心理学教授は、英ガーディアン紙(5月14日)に対し、仮説は「まったくもってもっともらしい」と述べている。この説は、現在提唱されているほかの学説ともうまく整合性が取れているという。一例として、近年出てきた説の一つにネクストアップ理論というものがある。日中に起きた出来事を夢のなかでより強固に学習処理しているという説だが、この理論ともよく似通った主張だと言えそうだ。

 突拍子もない夢にさえ意味があるのだとすれば、人間の脳のメカニズムには驚くばかりだ。

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Text by 青葉やまと