食料不安の豪州世帯が370万に増加 全世帯の3分の1超

メルボルンの市場(9月11日)|Donald Thoreby / Shutterstock.com

 電気、ガス、水道、食品、ガソリンなど相次ぐ値上げが家計を直撃し、真っ先に食費を削る家庭は日本だけではなかった。オーストラリアでも食費を節約する家庭が増えている。しかも、オーストラリアの全世帯のうち約3分の1の世帯が過去12ヶ月間に食料入手に苦労したという驚くべき調査結果がこのたび公表された。

◆過去12ヶ月間で食料不安経験 370万世帯に増加
 オーストラリア全土で、過去12ヶ月間に「食料不安」を経験した世帯は370万世帯(全体の36%)に上り、前年より35万世帯近く増加したことが、食料支援を行う非営利団体「フードバンク・オーストラリア」の2023年度飢餓報告書で明らかになった。フードバンク・オーストラリアは7月、年齢、性別も異なる、各州のさまざまな場所に居住する4342人を対象にオンライン調査を実施した。その結果から全国の推定値を算出した。

 食料不安は、「人々が活動的で健康的な生活のために食生活のニーズや食嗜好を満たす十分な量の安全で栄養のある食べ物に安全にアクセスできない場合に存在する状況」のことで、「慢性、季節性又は一過性のものである可能性がある」(外務省)。

 食料不安を経験したと推定される370万世帯は、メルボルンとシドニーの全世帯を合算した世帯数より多いとフードバンク・オーストラリアは説明する。同団体の最高責任者のブリアナ・ケイシー氏によると、「子供を空の弁当箱で学校に行かせる」、「年金生活者で、1日2食、あるいは1食で十分だと自分を納得させようとする」といった状況だという。そのうちの230万世帯以上が「深刻な食料不足」に陥っており、激しい空腹を感じたり、食事量を減らしたり、食事を抜いたり、丸1日食事をとらないなどの状況にある。

 十分な食料を安定的に入手することに不安を感じたり、苦労したりしている国民の割合は48%に上り、12ヶ月前と比べて3ポイント増加した。

 食料不安を経験した世帯のうち、初めての経験と回答した割合は77%を占め、約300万世帯が食料保障された状態から食料不安の範疇にこぼれ落ちたとされる。

 慢性的な食料不安の状態にある世帯数は75万世帯に上り、この割合は12ヶ月前と変動していない。ケイシー氏は「食料や日用品を調達するのが困難な人々の特徴に大きな変化を目の当たりにしています」と説明する。「食料不安世帯の77%が初めての経験で、彼らは若く、中・高所得者で、これまでこうした問題に直面したことのない人々なのです」(豪公共放送ABC、10/23)。

Text by 中沢弘子