ワイン名産地がベルギーに? 異常気象に苦しむ仏ブドウ園 ワインの味とアルコール度数が変化か

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◆懸念される味のバランス
 懸念されるのは、通常とは異なるブドウの生育で、ワインの味のバランスが崩れるのではないかという点だ。ワイン生産者の多くは、ブドウが熟しすぎて、ワインのバランスに必要とされる酸味とフレッシュさが失われることを心配しているという(ウェスト・フランス紙)。

 フランスのワインは地域ごと、またブドウ園ごとの個性が豊かなことで知られる。これは地理的条件や栽培方法、製造方法、また多様なブドウ品種の組み合わせによって作られてきたものだ。そのため、ブドウの味の変化が重なると、それぞれのアペラシオンの特徴を守るのが難しくなる。標準化した味を大量に生産する必要のあるブランドワインではなおさらのことだ。(ウェスト・フランス紙、8/26)

◆高くなるアルコール度数
 さらに、水不足はワインのアルコール度数にも影響を及ぼす。ソムリエでもあるブチェッラ教授は、その理由を「ワインのアルコールはブドウに含まれる糖分が酵母によってエタノールに変換された結果」だからだと説明する(ル・ソワール紙、9/1)。温暖化と干ばつでブドウがより早くより甘く熟すため、必然的にワインのアルコール度数が高くなるというわけだ。フランスのペイ・ド・ラ・ロワール地方の関係者らも同じ理由で今年のワインのアルコール度数は高めになると考えている(ウェスト・フランス紙、8/24)。

 実はこの傾向は新しいものではない。フランス国立農業・食品・環境研究所(INRAE)の調査によれば、過去20年でワインの度数は平均2%も上がっている(ル・ソワール紙)。

Text by 冠ゆき