20年ぶりの超円安を海外はどう見るのか?

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◆消費者には打撃 コロナ規制でインバウンドも期待薄く
 日本経済は輸出に依存しているため、歴史的に急な円高阻止に重点を置き、円安には手を出さないというアプローチだったとロイターは述べる。ワシントン・ポスト紙(WP)も、安倍元首相がデフレの脅威を食い止めるため円安時代をもたらしたとき、日本の経済界は大喝采を送ったと述べる。円安は自動車をはじめとする輸出企業が海外で得た利益を本国へ送金する際に役立つ。また円安で外国人にとっては日本が手頃な旅先となり、観光業や地域経済にお金が落ちることにもなるからだ。

 しかし、急激な円安進行でそのムードが変わりつつあるとWPは述べる。日用品をはじめさまざまな商品コストはハイペースで上昇しており、輸入に頼る企業の利益は圧迫され、価格上昇は消費者に痛みを強いている。日本は外国からの観光客に国境を開きつつあるが、その経済効果は当分の間限定的なものになるだろうとしており、全体として円安から受ける恩恵はこれまでほどではないという見方だ。

◆日本の資産はバーゲン 海外投資家大注目
 一方欧米市場に比べて日本株が割安だと考える投資家にとっては、円安で日本市場の魅力は増すかもしれないとロイターは述べる。現在は世界的に投資家がリスク資産を投げ売っているため日本株は下落しているが、2022年が始まってからはパフォーマンスはほかを上回っていたとしている。

 「安い」日本は、不動産や企業買収にも影響をもたらしている。野村ホールディングスのCEOは、20年ぶりの円安で日本の資産獲得競争において海外の入札者に大きな優位性が生まれ、インバウンド案件の波が押し寄せるだろうとフィナンシャル・タイムズ紙に語っている。

 円安の行き過ぎを懸念して、日本政府と日銀は為替介入の可能性に言及したが、ロイターはコストがかかる上に世界の為替市場に影響を与えることが困難なため、簡単に失敗する可能性があるとしている。円安を止めるとすれば、コロナ後の国境開放に伴う成長見通しの著しい改善とインフレ率の上昇により、日銀が方針転換をしてタカ派になる場合だという見方を紹介している。

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Text by 山川 真智子