統計より悲惨か…ロシアの貧困 ウクライナ侵攻でさらに悪化も

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 経済開発協力機構(OECD)によれば、ロシアの貧困層は2019年で1800万人おり、貧困率は12.3%だった。実は経済成長の恩恵を受けているのはモスクワやサンクトペテルブルクといった都市部とその周辺の住民だけで、ほかの地域では公式の貧困ラインよりさらに低い生活水準で暮らしている人が多数いるという。ロシア経済の問題点とは。

◆経済発展は大都市のみ 地方の悲惨な実態
 アナリストでロシアに詳しい元アメリカ国務省の特別顧問ポール・ゴーブル氏は、2019年時点でのロシアの貧困について紹介している。ロシア連邦統計局(Rosstat)によれば、屋内にトイレのない家やアパートで暮らすロシア人は3500万人、お湯の出ない住宅に住む人は4700万人で、家の中に水道がない人は2900万人だった。厳しい冬の寒さにもかかわらず、自宅にセントラルヒーティングの設備がない人は2200万人に上った。(ゴーフル氏のブログ『ウインドウ・オン・ユーラシア』)

 モスクワやサンクトペテルブルクしか知らない人には信じられない事実だが、地方の劣化と衰退は誰の目にも明らかで、中小都市でさえよい仕事も医療も教育もないため、人口は農村部から州都、さらにはモスクワに移動しているという。そのためあらゆるものがモスクワを中心とした半径200キロに集中し、ほかの地域は空っぽになりつつある。(同)

 ウクライナに送られるロシア兵に少数民族の割合が高いのは、伝統的に農村部や貧困地域出身者が入隊をより良い生活を得るための手段と見なしているからだと専門家は指摘する(英i紙)。チェコのエコノミスト、ミロスラフ・シンガー氏は、占領したウクライナの村のアスファルト道路や街灯にロシア兵が感心したという逸話を公的通貨金融機関フォーラム(OMFIF)の寄稿記事で紹介している。彼らがウクライナの民家で子供のおもちゃまで略奪しているという報道もあり、故郷での生活レベルの低さがうかがわれる。

Text by 山川 真智子