迷走する中国の計画停電、揺れる「世界の工場」 海上輸送にも乱れ
◆国外移転を検討する中国の経営者
上に例を挙げた広東省も江蘇省も赤に分類された地方だ。筆者が実際に聞いた話でも、赤の地方は、とくに厳しい電力供給制限を受けている。たとえば、江蘇省のポリ塩化ビニル(PVC)工場は、週に6日の停電を言い渡され、工場閉鎖を余儀なくされた。同じく江蘇省昆山市にある鋳造加工用材料を作る工場は、9月26日以来10月17日現在にいたるまで、毎週月曜から水曜の3日間、電力供給が止められているという。経営者の女性は、このままでは今月の賃金も払えないと途方に暮れていた。
評価が黄色の浙江省でも、電力は制限されている。ある工場経営者によれば、各工場は、納めている税金や研究への関与、環境への配慮などでA~Dの4つにランク付けされており、ランクによって電力供給の制限度が異なるという。たとえば、芝刈り機を製造しているAランクの工場は電力を供給されているが、シャワーを製造するBランクの工場は、週に2日停電となっている。CランクやDランクになるとさらに制限が厳しいため、工場の存続自体が危うい。また、たとえ自分の工場がAランクであっても、下請け工場がAランクとは限らず、納期厳守が難しい状況だという。そのため、現地の業者らには、政府の計画停電を一種の「工場淘汰」と捉える声も出ている。また今後のことを考えて、現在Aランクの工場でさえ、メキシコやモロッコ、ポーランドなどへの移転を検討あるいは決定している。
中国経済を大きく圧迫することがわかっていながら、海上運送費の高騰にも介入せず、計画停電に関する地方政府の迷走にも沈黙を守る中央政府の真意がどこにあるかはわからないが、中国が「世界の工場」から脱却する日は遠くなさそうだ。
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