迷走する中国の計画停電、揺れる「世界の工場」 海上輸送にも乱れ

Chinatopix via AP

◆石炭不足と価格の高騰
 計画停電を引き起こした電力不足の理由のひとつは、石炭不足と石炭価格の高騰だ。というのも、中国の電力の60%は石炭を用いた火力発電によるものなのだ。およそ一年前から中国とオーストラリアの関係が悪化し、中国はオーストラリアの石炭輸入を事実上禁止している。石炭不足は石炭価格の高騰を生んだが、電力会社はそれに見合う電気料金の値上げが簡単にできない。というのも、中国では電気料金の決定権は政府が握っているからだ。発電量を増やせば増やすほど損失が増す電力会社は、それを抑えるためフル発電を行っていない。この事態に対応するため、国家発展改革委員会(NDRC)は12日、15日から石炭火力発電による電力価格の値上がりを最大20%まで許可すると発表した(Caixin、10/13)。しかし、石炭の価格が今年1月から約3倍となっていることを考えると焼け石に水かもしれない。

◆地方政府の迷走
 ところで、計画停電の理由は電力不足だけではない。実は、地方政府が自らの評価を上げるために取った策でもあるのだ。

 習近平国家主席が昨年9月、「2060年までにCO2排出量と除去量を差し引きゼロにするカーボンニュートラルを目指す」と表明したことは記憶に新しい。その流れから、国内約30の行政区を温室効果ガス(GES)の管理レベルで緑~赤に分類した表が、今年8月12日に発表された。それを見ると、緑の評価を受けた行政区は約3分の1で、残りは赤と黄色が半々だ。赤の評価を受けた地方政府は、急いで緑レベルに近づくため、計画停電に踏み切ったというわけだ(ウエストフランス紙、10/2)。

 また、地方政府のなかには、製造している物の価値で電力供給先を決めているところもある(日経アジア)。端的にいえば、高いものを作っている工場には電力を供給するが、安いものを作っている工場は停電にする、という決め方だ。だが、これでは下請け工場の安い部品が生産されず、電力はあっても稼働できない工場が出てくる。混乱が混乱を呼ぶ図式が目に見えるようだ。

Text by 冠ゆき