ビッグテック規制強化へ 米FTC新委員長のリナ・カーンとは

Saul Loeb / Pool via AP

◆カーン率いるFTCへの期待
 カーンが顧問の一人として関わっていた米下院司法委員会は昨年、『デジタル・マーケットにおける競争に関する調査報告書(Investigation of Competition in Digital Markets)』を発表。報告書では、デジタル・プラットフォームを提供する市場の支配的なプレーヤーの代表として、アマゾン、フェイスブック、グーグル、アップルの4社のそれぞれに対しての言及がなされている。アマゾンは、競合の買収によって市場シェアを拡大している点、マーケット・プレイスという存在であると同時に、自社商品も販売しているという点が課題として指摘されている。フェイスブックも同様に、WhatsAppやインスタグラムの買収によって市場独占状態を確立した課題が指摘されている。そしてアップルも、アップ・ストアにおいてベンダーのアプリに対して高い手数料を請求することによって、自社アプリの優位性を維持している。(Axios

 カーンのFTC委員就任に対する投票結果は68対28。この投票の後、バイデン大統領はカーンをFTC委員長に指命した。さまざまな論題に関して民主党と共和党の議論がわかれている状況において、カーンは超党派で支持を獲得したといえる。カーン率いるFTCは、ビッグテック企業の規制の議論をリードすることになる。彼女の委員長就任はビッグテック規制を進めたい民主党議員にとっては、とくに朗報だ。エリザベス・ウォーレン(Elizabeth Warren)上院議員(マサチューセッツ州)は、カーンのFTC委員長就任は、反トラスト法施行の復活と、米国の経済社会や民主主義にとっての脅威である独占と戦うことによって、大きな構造変革を起こす機会となると述べた。バイデン大統領は、今年3月、同じくビッグテック企業規制論者の一人であるティム・ウー(Tim Wu)を国家経済会議(National Economic Council:NEC)のメンバーに指命している。今月24日、下院司法委員会はビッグテック企業を規制するための反トラスト関連の6つの法案を可決。法案には、オンライン・プラットフォーム上で自社の製品・サービスを優遇させないようにする規定や、競合の買収を制限するような規定、買収申請手数料の増額により、FTCと司法省が反トラストの規制を強化する予算を確保するための規定などが含まれている。カーン率いる「新しい」FTCと、バイデン政権のビッグテック規制に関する政策展開に引き続き注目が集まりそうだ。

【関連記事】
巨大化しすぎたビッグ・テックと「セクション230」の行方
誤情報拡散で民主主義の危機? バイデン政権「SNS規制」の可能性
変化の時代 「リーダー退任」の未来への役割 米国からの学び

Text by MAKI NAKATA