南アフリカのゴースト・キッチン事情

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 パンデミックとロックダウンによって多くの飲食店が営業を停止・縮小せざるを得ない状況下、デリバリーを専門とした「ゴースト・キッチン」というレストラン業態が改めて注目されている。デリバリー専門というモデル自体は新しいものではないが、いま新しい可能性が期待されている。南アフリカにおけるゴースト・キッチンのキー・プレーヤーとは。

◆ゴースト・キッチンの可能性
 ゴースト・キッチン、ダーク・キッチン、クラウド・キッチン、バーチャル・レストランなど、さまざまな呼び方がある、デリバリーに特化したレストラン業界が、ここ数年、世界各地で広がりつつある。ゴースト・キッチンは、キッチンのみ・客席なしのレストランで、人目につかないという意味においてまさに「ゴースト」な業態だ。市場調査会社のユーロ・モニターによると、米国ではイート・イン客が過去10年において、年々減少し続け、2019年にはその消費額が半減。そしてパンデミックが発生した2020年にはその傾向がさらに進んだ。一方で、デリバリーのシェアが倍増し、レストラン業界の消費額の15%を占めるまでとなった。同社は、米国におけるイート・イン客は先の5年間でさらに減少し、デリバリーがレストランのビジネス・モデルの重要な要素となり、とくにゴースト・キッチンが中心戦略となるだろうと予測している。また、レストラン業界は、ファッションなどの小売業界と同様に、ハイエンドなファイン・ダイニングがイート・イン型を維持するとともに、ゴースト・キッチンを中心戦略とした多様なフード・サービスが展開される可能性を示している。

 欧米のライフスタイル・トレンドや、新しいサービス展開の広がりは、南アフリカの都市部にもあてはまることが多い。スタティスタ(Statista)のデータによると、南アフリカにおける2021年のオンライン・フードデリバリー業界の市場は、約11億ドル規模になるとの試算。2022年にはさらに10.8%成長するとの見込みだ。2024年までのCAGRは7.8%、2024年には市場規模は14億ドルまで拡大するだろうとされている。また、オンライン・フードデリバリー使用者は、2024年には1800万人に達するとの予測だ(南アフリカの2019年時点の人口は5856万人)。南アフリカのフードデリバリー市場はまだ初期段階だが、今後デリバリーに特化したプラット・フォーム(ウーバー・イーツなど)の拡大が、市場全体の伸びを牽引するとみられている。

Text by MAKI NAKATA