脱車社会、バイデン政権がバス・鉄道整備へ 高速鉄道は?

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◆大統領は鉄道推し 高速鉄道の行方は?
 バイデン大統領は上院議員時代に全米鉄道旅客公社(アムトラック)の電車で通勤し、「アムトラック・ジョー」の愛称で親しまれてきた。その名の通り、今回は都市間鉄道網の整備と拡張にも800億ドル(約8.7兆円)を投じるとしており、過去数十年で最大の旅客列車に対する投資となる(NYT)。さっそくアムトラックは30以上の新ルート候補の地図を公開した。

 一方、期待外れもあった。大統領は過去に高速鉄道推進の考えを示しており、日本の新幹線のようなシステム導入に向かうのではという期待もあったが、計画にはまったく言及がなかったという。実はこれまでのアメリカの高速鉄道計画は多くがトラブルに陥り完成していない。過去に運輸長官を務めたレイ・ラフッド氏は、こういった事情から、大統領は既存のアムトラックシステムの拡張に注力することにしたのではないかと述べている(政治誌ポリティコ)。

 もっとも、最終的には計画に取り入れられるのではという話もある。運輸長官のピート・ブティジェッジ氏は、米国市民は最高水準の鉄道サービスを享受すべきとし、他国の選択肢より劣っているという理由はないと語っている(同)。将来的には日本企業の参入も期待できそうだ。

◆実現には議会の壁 高コストも懸念材料
 画期的と受け止められている今回の発表だが、実現には課題も多い。まず、議会の承認が必要だが、共和党政治家の多くは資金確保のため増税となることから反対を表明している。また、自動車への依存が高い田舎や郊外では、地元の政治家が道路への税投入を好むと指摘されている。

 さらに、アメリカのインフラ建設は他国と比べ高額かつ困難になっているとされる。遅延と予算超過が続くカリフォルニアの高速鉄道がその例だとNYTは述べる。WIREDは、既存の老朽化したバスや電車の修理に対して連邦政府の補助を増やすことは良いとしながらも、国の交通システムを根本的に変えるには不十分とも指摘しており、脱車社会、脱炭素への取り組みは難航が予想される。

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Text by 山川 真智子