いま「観光客ウェルカム」の国々の事情

スリランカのバンダラナイケ国際空港の職員(1月20日)|Eranga Jayawardena / AP Photo

 イギリス、南アフリカ、ブラジルなどでの新型コロナウイルス変異株の確認を受け、世界中で再び国境を閉ざす国が増えてきた。そんななか、あえて観光客受け入れを再開した国もある。

◆21日から国境を開いたスリランカ
 CNN(1/22)によると、インド沖の島国スリランカのラナトゥンガ観光大臣は21日、同日から国境を開くことを公式に発表した。2ヶ所ある国際空港も同日営業を再開した。旅行者には、パンデミック感染予防を目的とする制約がいくつか課されるものの観光を妨げるものではない。具体的には、渡航前96時間以内に行われた検査の陰性証明書とオンライン健康申告書の提出、また滞在中5日目と7日目、プラス2週目の最大合計3回の感染テストを受けることが義務付けられる。入国後最初の2週間は政府指定のホテルかリゾートで過ごさなければならないとされているが、滞在期間は自由なので、2週間に満たず出国することも可能だ。その場合は、指定ホテルだけで過ごすことになる。

 隔離とはいっても自由度は高い。ゲストは、プールやジム、サロン、レストランなどの施設利用が可能で、2週間の隔離中に、ホテルの外に観光に行くこともできるという。訪問可能なのは、国立公園や森林保護区、サファリパーク、植物園など14ヶ所の観光サイトだ(スリランカ観光開発局)。訪問可能な曜日制限があったり、専用車を使わないといけない、寄り道は許されないなどの条件はあるが、他国で隔離といえば、ホテルの部屋での缶詰を意味することを思えば、格段に緩やかな環境といえよう。

 ラナトゥンガ観光相は、人口2180万人の同国の「約300万人の生計が観光業に依って」いると発言している。ジェトロによればスリランカでは「2018年の観光収入は43億8063万ドルと、(中略)国内で3番目に大きな外貨獲得手段だった」が、2019年に発生した爆破テロの影響で観光客が激減してしまう。その後、国のインフラを構築し直し、観光客がようやく戻り始めたタイミングで出現したのが新型コロナウイルスだった。何とかして観光業の灯を守ることは、国にとって重要なミッションなのである。

Text by 冠ゆき