返還20年「優等生」マカオ、中国が金融センターに育成か?

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 香港での反政府運動が長引くなか、同じ一国二制度のもとにあるマカオへの中国政府の評価が高まっている。中国はマカオの金融センター化を促進させる計画で、香港情勢の悪化を念頭にいれた安全策ではないかとも見られている。

◆「香港は見習え」マカオの株が上がる
 中国の全国人民代表大会常務委員長の栗戦書氏は、中国が望む一国二制度のあり方に忠実なマカオを称えた。栗氏は、中国政府はマカオと香港に同じことを期待しているとし、香港は統治のモデルとしてマカオを見習い、「中央政府の精神」を理解すべきだと述べた(マカオ・ニュース・エージェンシー、以下MNA)。

 香港とマカオは、統治の文脈と内容において大きく違っている。MNAによると、そもそもマカオの基本法がうまくいっているのは、マカオ市民が文化的にも政治的にも、中国本土に近い考えを持っているからだという。マカオは第二次世界大戦のころから本土寄りだった。ポルトガル領で政治的には中立だったにもかかわらず、実際には多くの住民は本土の共産党か国民党のどちらかを支持していた。ところが1966年に起こった大暴動をきっかけに、ポルトガル政府は中国共産党に弱腰になり、国民党とその影響力をマカオから排除した。結果として、マカオは親共産党となった。イギリス植民地だった香港で、1980年代まで共産党勢力が厳しく制御されていたのとは対照的だ。

 さらに、マカオの教育では中国の歴史を教えることを重視している。また政治的な批判や主張をすることが盛んな市民社会である香港とは違い、マカオの市民社会は弱々しいとMNAは述べる。弁護士は従順で、カジノ業従事者や公務員がメインのミドルクラスは、地元政府の監視ができるほどの自主的な政治的勢力には育っていないと指摘している。

 ロイターによれば、マカオの60万人の人口の半分以上は、ここ数十年の間に中国本土から来た移民で、これも本土との強い一体感を育てるのに役立っているという。住民のほとんどが地元生まれの香港とは大きく違うところで、香港のマカオ化を期待することはかなり困難だ。

Text by 山川 真智子