米セーフガード発動、中国の報復は? iPhone、旅客機、大豆で対抗の可能性

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 アメリカのトランプ政権は22日、太陽光パネルと洗濯機を対象としたセーフガードの発動を発表した。この分野は中韓企業が生産量の多くを占めており、これら2国を狙い撃ちにしたものではないかと報じられている。特に中国の反発は必至と見られるほか、セーフガード発動は米国内産業にむしろ打撃となる可能性が指摘されている。

◆16年ぶり
 ニューヨーク・タイムズ紙は、セーフガードの発動が2002年の鋼鉄以来初であると伝える。トランプ氏は保護貿易主義を訴えてきたが、TPP脱退やFTA破棄の示唆などの政策に対し、明確な効果は出ていない。課税措置はこれらに代わる一手だと同紙は見ている。

 同紙によるとセーフガードは、ソーラーパネルについては4年間継続する。初年度は30%という高税率を課し、その後15%まで低下させる内容だ。国内産業が安価なモジュールを確保できるよう、毎年一定量までは高税率の対象外とする。洗濯機への措置は3年間となる。初年度は50%の税率を設定し、年を経るごとに税率を下げる。こちらも年ごとに一定数までは対象外となる。

 影響を受けるのは主に中国と見られる。ブルームバーグでは今回の措置が直接的には中国だけを対象にしたものではないとした上で、同国が約30億ドル相当のソーラーパネルを生産し、世界最大の生産国となっていると伝える。

 ロサンゼルス・タイムズ紙は、中国政府の奨励によるソーラーパネルの生産急増を指摘する。2005年には世界生産量の7%に過ぎなかったが、現在では61%にまで拡大した。加えて、洗濯機に関してはサムスンとLGが米国内でシェアを伸ばしていることから、実質的に韓国がターゲットとなっている。

◆報復措置
 今回の動きに対し、中国は即座に反発した。ブルームバーグ(1月23日)は、中国商務省が強い不満を表明したと報じ、「ドナルド・トランプ米大統領はまもなく、貿易に関して中国と争うことについて、教訓を得る可能性がある」として、中国からの報復を危惧する。

 記事によると2011年、アメリカがソーラーパネルに課税した際には、その原料となるアメリカ産ポリシリコンへの課税で中国は対抗した。また、共産党の機関紙傘下のグローバル・タイムズ紙は2016年、貿易戦争となった場合、米ボーイングとの取引は仏エアバスに移り、アメリカ産自動車とiPhoneなどは販売が減少し、大豆やトウモロコシの輸入は停止されるだろうと警告している。これらを踏まえブルームバーグでは、今回も課税や独禁法適用などで中国政府が報復措置に出る可能性があるものと捉えている。

 加えて、不当な措置としてWTOへの提訴が行われる可能性も高い。ロサンゼルス・タイムズ紙は、前回の2011年のセーフガード発動時にこうした動きがあり、裁定に従う形で措置が無効化されたと振り返る。一方で裁定が出るまでは有効であるため、一定の効果はあると同紙は見ている。

◆割れる世論
 アメリカ経済への影響は不透明だ。ニューヨーク・タイムズ紙によると、保護政策を求めていた一部企業らは、今回のセーフガード発表を歓迎する。しかしエコノミストらは、ソーラーパネルの調達価格上昇による産業への悪影響に懸念を募らせる。特に大規模なソーラーファームの運営者とその電力の購入者らは、今回の動きに反対する立場を取っている。

 ロサンゼルス・タイムズ紙ではさらに一歩踏み込み、ソーラー発電分野のコスト増が雇用縮小を招くとする業界アナリストらの見解を伝える。また、ソーラーエネルギーの普及促進の妨げになるとして環境団体は反発している模様だ。

 同紙では今回の宣言を皮切りに、他の品目でもセーフガード発動が見込まれるとしている。中国の反発が予想されるほか、米国内産業の反応が注目される。

Text by 青葉やまと