GDP7期連続プラス、輸出・株価好調 「緩やかに回復」もインフレが不発な理由

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 内閣府の発表によれば、日本の2017年7~9月期のGDP速報値は前期と比較し0.3%増となり、年率換算で1.4%増となった。これで7期連続のプラス成長となり、過去16年間で最長を記録した。海外では日本経済復活という見方も多く、日本株への注目も高まっているが、アベノミクスが目指すインフレがいまだ起きていないと指摘されている。

◆数字では日本経済好調。穏やかだが継続して成長
 ロイターは、今期の成長は輸出と設備投資のおかげと解説している。特に、プラス0.5%の貢献となった外需によるところが大きく、世界的需要の改善を反映し、アメリカやアジアへの自動車や電子部品の輸出が好調だったという内閣府の発表を報じた。

 民間消費は前期比で0.5%減となったが、茂木経産相は、天候不順による一時的要因とし、「緩やかな回復」という見方は変わっていないと述べる。みずほ総合研究所の徳田秀信主任エコノミストも、労働市場は好調なため、消費も将来的には上向くとし、経済は順調だとロイターに話している。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)は、7期連続成長は、日本経済を低迷から救い出そうとしている安倍首相にとっては歓迎すべきニュースだと述べる。2016年以来、日本経済は毎四半期0.9~2.6%(年率)の成長を続けており、JPモルガン証券のシニアエコノミスト足立正道氏は、高い企業投資にも助けられ、1~2%の成長が続くだろうと見ている。

◆海外勢の信頼も回復?日本株がお奨め
 日本経済回復という見方から、日本株への海外の関心も高まっている。現在小休止はしたものの、株価は上昇を続け、11月前半には四半世紀ぶりの最高値をつけた。英投資情報誌『Moneywise』は、今年の日本株のパフォーマンスは目を見張るものがあるが、それでも1989年の最高値の半分ほどでしかなく買いだと述べる。記録的に低い失業率、GDP連続成長などが投資家の楽観度を上昇させているとし、名目GDPが今年初めに1997年レベルを超えたことを、デフレ終焉の始まりとも捉えている。欧米の中央銀行が金融緩和の出口戦略に向かうなか、日銀は緩和的金融政策を続けているため、円安となり輸出企業の魅力がさらに強化されると解説し、日本経済が直面する問題は大きいものの、投資家にとっては大きなチャンスがあるとしている。

 ロイターのインタビューに答えたゆうちょ銀行の佐護勝紀副社長は、これまで四半世紀に渡りTOPIXの上限となっていた1700~1800ポイントのレジスタンス・ゾーンを試す展開になってきたと述べる。事実TOPIXは11月9日に1844を記録しており、同氏はこのレベルを破れば長期的な上昇トレンドに向かうと見ている。

◆最大の問題は進まないインフレ。カギは雇用
 ただし海外メディアは、インフレが遅々として進まないことを懸念している。WSJは、アベノミクスが目指したのは、賃金、消費、インフレの上昇サイクルに経済を持って行くことだったが、最大の問題は平均賃金が上がらないことで、これが多くの労働者が自由に消費できない理由だとしている。APも、企業はこのところ記録的な収益を上げているのにもかかわらず、少子高齢化で将来的需要が縮小すると予期しているため、賃上げをしようとせず、成長の早い海外市場での拡大にフォーカスしていると述べている。

 エコノミスト誌は、賃金が期待したほど上がらない理由として、女性や高齢者、外国人など、以前はカウントされなかった労働者が参入していること、一部の企業ではテクノロジー利用による省力化で生産性を高め、雇用コストを抑えていることなどを上げているが、最大の理由は、日本の雇用制度にあると見ているようだ。

 非正規雇用の賃金はすぐに上昇したが、コアとなる正規労働者の賃金があまり上がらない。日本では正規労働者を解雇するのは難しく、社内で大きく地位を失わない限りは正規労働者が簡単に職を辞すことはないため、結果として労働者の交渉力は労働市場の需給の変化には影響されず、ただ生活費の上昇と同じペースで賃金妥結となってしまうと同誌は指摘する。政府は、労働者が将来のインフレを予測し、より寛大な賃金を要求することを望んでいるが、現在の給与合意は現時点での物価圧力を反映しており、政府の期待通りにはいかないのだという。

 日本の焼き鳥店「鳥貴族」が28年ぶりに値上げに踏み切ったニュースを例に、日本人の中には物価上昇の必要性を理解せずインフレが起こらないのを歓迎する人もいれば、あまりに安い価格が持続可能なのかと問う人もいる、と同誌は述べる。そして物価が上がっても上がらなくても心配するという憂鬱な日本人の傾向が、デフレとの戦いにおいての、実はもう一つの障害なのではないかと述べている。

Text by 山川真智子

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