輸出好調、貿易収支2年9ヶ月ぶり黒字化 日本経済再び軌道に乗るか、海外メディア注目

 財務省が22日発表した3月の貿易統計(速報)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は2293億円の黒字だった。黒字になったのは2012年6月以来、2年9ヶ月ぶり。原油価格下落により、輸入額が抑えられたことに加え、アメリカなどへの輸出が好調だったことが要因だ。内需に弱さの残る今、日本経済にとっての輸出の重要性を、いくつかの海外メディアは強調している。しかし、黒字がこの先続くかについては、疑問視しているエコノミストが多いようだ。

◆国内消費の弱い今、海外輸出の好調には特に意味がある
 今回の貿易黒字について、特に、輸出が好調であるという点から、日本経済にとって明るい材料と見なしている海外メディアも多い。

 日本経済は、消費者需要の弱さと、非常に低い物価上昇率のせいで損なわれているが、今回の貿易統計は、日本経済にとって喜ばしい後押しとなる、とドイツの公共国際放送ドイチェ・ベレは語る。そして、この発表によって日経平均株価が急上昇し、22日の終値は15年ぶりに終値で2万円を超えた、と伝える。(近々行われる決算発表で)並外れて大きな企業収益が期待されることも、株価高騰の一因だとしている。

 ブルームバーグは、貿易黒字が、低調な国内消費と格闘する日本経済に支援を与える、と語る。みずほ証券の末広徹マーケットエコノミストは、「海外需要は今年、国内の消費と設備投資が低調なままだと予測される中で、日本経済にとって救いになるでしょう」「輸出は上昇傾向です」とブルームバーグに語っている。

 ロイターは、3月に見られた輸出の増加が、日本経済を再び軌道に乗せるかもしれない、としている。自動車と電子機器の輸出が活発になり、3年近くぶりの貿易黒字となったが、これは、経済成長が再び軌道に乗るかもしれない、という有望な兆しだと語る。

◆好調な輸出は好材料。しかしアメリカに過度に頼るのは危険?
 今回、貿易黒字となった理由について、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙は、原油価格の下落、円安、アメリカの需要回復に助けられた、と語っている。アメリカ経済の回復と、中国の中流層の拡大が、日本製品の需要を増大させている、としている。

 ブルームバーグは、自動車、半導体等電子部品、金属加工機械が、輸出の増加に最も貢献した、と伝える。

 ロイターは、好調な海外需要は、日本経済が昨年の思いがけない景気後退から抜け出す中、日本経済を強化する鍵と見なされている、と語る。三井住友アセットマネジメントの武藤弘明シニアエコノミストは、「輸出は今後も拡大し、アメリカへの輸出がその先頭に立つでしょう」、「原油価格(の下落)が輸入額を押し下げており、黒字幅も拡大しそうです。これは経済成長にとってプラスです。今回の貿易統計には、良い兆しがたくさんあります」とロイターに語っている。

 アメリカへの輸出額は、自動車輸出が増え、前年同月比21.3%増となった、とロイターは伝える。

 このように、輸出の好調さは、アメリカ経済の好調に負う面も大きかった。しかし、アメリカのルー財務長官は、去る17日に発表した声明で、「世界経済が成長のために、アメリカの需要に深く依存するという、経済危機前のパターンに戻りつつあることを懸念している」と述べている。ロイターが伝えた。長官は、世界はアメリカの消費者に過度に頼ることはできないと警告し、日本を含めた世界の主要輸出国に、もっと国内での経済成長を作り出すよう迫った、と記事は語っている。

◆貿易黒字は長く続かない?
 貿易黒字がこの先も続くかについて、海外メディアは、否定的な見解を多く取り上げている。

 今回の貿易統計は、安倍政権の輸出拡大の取り組みが、いくらか前進したことを示唆する一方、世界的な原油価格の急落が黒字化の最大の要因だった、とWSJ紙は語る。3月の原油輸入額は、前年同月の約半分になっている。原油価格がこの先も低いままだという保証はなく、アメリカや中国などの経済が再び減速するかもしれない。多くのエコノミストは、日本の貿易収支がこの先も改善し続けることを疑問視している、と同紙は語る。

 みずほ証券の宮川憲央シニアエコノミストはロイターに、「黒字は、輸出額の増加よりも、(原油などの)輸入額の減少による面が大きい」、「あと2、3ヶ月は黒字が続くかもしれませんが、1年は続かないでしょう。それでも、輸出の増加は日本経済にとってプラスです」と語っている。

 また、ブルームバーグでは、先述の末広氏が、貿易収支は4月には赤字に戻り、2015年としてはマイナスになる、との見通しを語っている。今回、一時的に黒字に戻ったのは、2月、春節のために、アジアでの活動が減少し、3月にその反動があったことが大きい、と氏は語っている。

 CNBCでは、英調査会社キャピタル・エコノミクスの日本担当エコノミストMarcel Thieliant氏が、今年は春節がいつになく遅かった影響で、今回の数字はおそらく偏っている(春節の影響が3月に食い込んだ)と語っている。

 BBCでは、同じくThieliant氏が、「先々を考えると、今年に入ってからの原油価格の反動が、いまのところまだ石油輸入額に十分に反映されていません」と語っている。また、「今後数ヶ月で円安がさらに進むものと予想しています。その結果、円ベースでの輸出額以上に、輸入コストが引き上げられるでしょう。結論としては、貿易黒字はこの先長く続きそうもありません」としている。

 それでも、輸出はこの先も伸び続ける可能性がある。ブルームバーグが伝えるところによると、国際通貨基金(IMF)は、4月14日に発表された世界経済見通しで、パートナー国の成長が高まっていること、ならびに円安を考慮すると、日本の民間投資と輸出は強くなることが予想される、としているという。

Text by NewSphere 編集部