日経平均21,000円超え? コーポレートガバナンス改革で投資環境改善、海外から期待も

 2014年、株価はおおむね右肩上がりだった。今年の大発会で、16147.54円でスタートした日経平均は、12月25日には17808.75円の終値だった。株価の上昇は、アベノミクス最大の成果の1つと言っていいだろう。投資環境の改善により、この傾向はさらに続くものと、日本の著名投資家が語っている。フィナンシャル・タイムズ紙が伝えた。

◆来年は日経平均が21000円を超える?
 これまでの株価上昇では、アベノミクス「第1の矢」、「大胆な金融政策」により、円安が誘導され、海外からの投資が盛んになったことが、その一因である。しかし現在は、国内からの投資が盛んになりつつあるようだ。

 フィナンシャル・タイムズ紙(最終更新日23日付の記事:FT紙a)は、「和製ウォーレン・バフェット」こと、著名な投資家の竹田和平氏が、2015年には日経平均が21000円を超えると予測していることを伝える。後押しするのは、株式の、投資対象としての長期的な魅力を高めるための一連の方策だという。

 これには、「民間投資を喚起する成長戦略」というアベノミクス「第3の矢」が関わっている。規制緩和が注目されがちな「第3の矢」だが、例えば、企業の収益性・生産性を高め、企業価値を向上させるため、コーポレートガバナンスの強化もうたわれている。

◆「コーポレートガバナンス・コード」とは?
 現在、東証と金融庁が協力し、上場企業のコーポレートガバナンス上の諸原則を記載した「コーポレートガバナンス・コード」の策定に向けて動いている。来年6月の株主総会のシーズンに間に合うよう、東証が策定するという。

 この「コード」では、上場企業は、複数の独立社外取締役を選任することや、取締役の、株主に対するもろもろの責任を明確化することなどが求められることになる、とFT紙aは伝える。強制ではないが、実施しない場合には、その理由を説明することが要求されるという。

 経営の透明性が高まり、株主の経営への影響力も強まることから、より投資しやすい環境が生まれることが期待される。この「コード」制定の提唱者である、ガバナンス専門家のニコラス・ベネシュ氏は、「コード」について、「かつてはタブーだった問題について、現状を変える、本物の、しっかりした『第3の矢』」とFT紙aに語っている。

◆長年の企業慣習「株式持ち合い」は悪?
 その「コード」が変えようとしている現状の一つに、「株式持ち合い」がある。フィナンシャル・タイムズ紙(24日付の記事:FT紙b)は、日本の上場企業は昔から、取引関係を強固にする手段として、お互いの株式を保有し合っている、と語る。

 持ち合いでは、株保有が長期にわたる傾向があり、相手企業の経営に株主として口出しすることも少ないので、経営陣にしてみれば安心が増える。

 しかし安倍政権は、そのようななれ合いの取り決めを激しく非難している、とFT紙bは語る。持ち合いを解消すれば、経営陣が投資家からのより厳しい精査にさらされることになり、日本経済の成長の可能性が増大する可能性がある、というのだ。また、企業は、よりリターンが期待できる対象に投資するようにもなるだろう。

「コード」では、株式持ち合いについて、1年ごとにそのリターンとリスクを評価し、保有のねらい・合理性について具体的な説明を行うことが求められるようになる。FT紙bによると、この要請によって、徐々に株式持ち合いは減っていくことになるはずだ、とある政府高官が語っているという。

◆「株式持ち合い」は必ずしも悪ではない、との反論
 これに対し、経営陣からは異論の声も上がっている。三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)の宮田孝一社長は、株式持ち合いは「必ずしも悪いことではない」、「日本企業の考え方と、大いに関係がある」と語っている(FT紙b)。

「非常にデリケートな問題ですが、もし私たちが相手企業の株式を保有していないと、相手企業は私たちと取引をすることに乗り気でなくなる、というケースがあるでしょう」「(相手企業の)株式を保有することで、私たちは身銭を切っている。好ましいリターンがある以上、それ(株式持ち合い)は投資する側にとって良いことなのです」と宮田社長は語っている。ここでいうリターンは、金銭的なものでなく、信頼というリターンだろう。

◆株式投資を推進する三井住友銀行
 とはいえ、株式持ち合いの解消は、全般的な流れとしてすでに存在しているようだ。FT紙bが伝えるところによると、三井住友銀行の「政策保有株式」(純粋な投資目的以外での株式保有)は、2001年以来、急激に減っているという。2001年には、取得原価で5.9兆円分を保有していたところ、今年9月末では、1.67兆円となっている。この傾向は他のメガバンクでも同様である。

 その一方で、三井住友銀行は、株式への投資を積極的に推し進めている。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙が伝えている。日本の銀行は、日本国債を大量に保有している、と同紙は語る。これは、投資対象としての安定性が好まれたことなどによる。しかし、(この低金利の時代に)国債による収益はほんのわずかであるため、投資対象としてはもはや魅力的ではない、と宮田社長は語っている。

 そこで三井住友銀行は、国債への投資額を最小限に抑え、その分、株式への投資に移行したという。三井住友フィナンシャルグループ(三井住友銀行)の国債保有残高は、13年3月末の26.2兆円から、現在12兆円にまで減っている。これに対し、三菱UFJフィナンシャル・グループは約40兆円分、みずほフィナンシャルグループは約22兆円分を保有しているという。

Text by NewSphere 編集部