「戦後最大」電力システム改革、閣議決定 各紙が指摘するメリットと課題とは?

「戦後最大」電力システム改革、閣議決定 各紙が指摘するメリットと課題とは? 政府は2日、「電力システムに関する改革方針」を閣議決定した。経産省の発表によると、改革の目的は、「電力の安定供給確保」、「電気料金抑制」、「需要家の選択肢や事業者の事業機会拡大」となっている。内容としては、大きく3つのステップにわけられている。まず、2015年に「広域系統運用の拡大」、具体的には電力の「融通」を進める組織を創る。次に、2016年に「小売及び発電の全面自由化」。そして2018~2020年に「発送電分離」を目指す、としている。
 日本各紙(朝日・読売・産経)は、改革のメリットと課題についてそれぞれの視点から論じた。

【電力システム改革のメリット】
 改革が進むことで、電力の「融通」による供給安定化、電気料金低下、関連産業の成長などを、各紙はメリットとして挙げた。朝日新聞は、家庭や企業が電気料金や発電方法を比べ、“どの電力会社から電気を買うか”自由に選べることが、競争を促すと分析。発送電分離が実現してさらに競争が加速すれば、費用面で割にあわない原発の新設が減り、自然エネルギーなどの発電所が増えると予測している。

 【電力システム改革の課題】
 一方課題については、各紙ともに、自由化が必ずしも電気料金を引き下げるわけではないことを挙げている。産経新聞は、原発停止で電力供給が足りない状況では、消費者に選択の余地が生じず、料金は簡単には下がらないとみている。“改革の効果を挙げるには、電力供給の不安を解消していくことが課題”として、原発の再稼働を求める姿勢は変わらないことを示した。また読売新聞は、企業向けの電力販売は10年以上前から自由化が進められているにもかかわらず、新規事業者のシェアが3%に留まっていると指摘。「規制なき独占」の懸念から、家庭向け料金の認可制については慎重な判断が必要と主張している。
 さらに、「発送電分離」は電力供給の安定を損ないかねないと読売新聞は指摘する。アメリカや韓国で大停電が起きたことを挙げ、同じ失敗を招かないよう慎重に制度設計すべきと主張している。産経新聞も、電力自由化を実現したカリフォルニア州は、日常的な電力不足に陥っていると懸念をあらわにしている。
 対して朝日新聞は、発送電分離のみ、自民党の反対で当初案の表現が弱められたことを挙げ、改革が「骨抜き」になるリスクを懸念している。さらに、送配電会社は電力会社の子会社になるため、“支配力が残れば、送配電網の公平な開放につながらない”と懸念を表した。

Text by NewSphere 編集部