オリンピックで編み物に夢中の金メダリスト トーマス・デーリーとは

オリンピックで編み物に夢中の金メダリスト トーマス・デーリーとは

zhangjin_net / Shutterstock.com

通常より1年遅れて2021年に開催された東京オリンピックは、世界中を熱狂の渦に巻き込んだ。白熱の競技はいずれも注目の的であったが、中には意外な姿で話題をさらった選手もいた。

イギリスのトーマス・デーリー選手は、男子シンクロ高飛び込みで金メダルを、個人の男子高飛び込みで銅メダルを獲得した。しかし、注目されたのはそれだけではない。彼はなんと、会場の観客席で編み物をしていたのだ。一体彼はどのような人物なのか。編み物の腕前も金メダル級な彼の作品もインスタグラムから紹介しよう。

東京オリンピックで話題の「編み物王子」とは

トーマス・デーリーはもともと「飛び込み王子」の愛称で親しまれていたが、東京オリンピックで編み物が注目されてから「編み物王子」とも呼ばれている。そんな彼の飛び込み選手としての経歴、そして「編み物王子」としての経歴を追っていこう。

プロフィール

フルネームThomas Robert Daley
(トーマス・ロバート・デーリー)
生年月日1994年5月21日
出身イギリス(イングランド・プリマス)
専門競技高飛び込み(シンクロ、個人)
獲得メダルオリンピック:金1、銅3
世界水泳選手権:金2、銅1
ヨーロッパ水泳選手権:金4、銀2 など
配偶者Dustin Lance Black
(ダスティン・ランス・ブラック)
公式サイト・SNS公式サイト:
MADE WITH LOVE BY TOM DALEY
Instagram:
@tomdaley
@madewithlovebytomdaley

イギリス出身の高飛び込み選手である彼は、2007年に国際大会デビューして以降、オリンピックやヨーロッパ水泳選手権など数々の大会で活躍している。

また、趣味だという編み物の腕も確かで、「Made With Love」という編み物作品のブランドも立ち上げている。

オリンピック選手としての経歴

トーマスは7歳から飛び込み競技を始め、以後さまざまな大会で優勝し、注目を集めた。2007年に初出場した国際大会では、10m高飛び込みシンクロのいきなり銀メダルを獲得している。

翌年2008年には、北京でオリンピック初出場を果たす。出場全選手の中でも、当大会の決勝進出者の中でも最年少で、10m高飛び込みシンクロでは8位、個人10m高飛び込みでは7位の成績を修めた。

その後も国際大会で好成績を出し続けたが、競技生活は必ずしも順風満帆ではなかった。2012年には、理想とする肉体と現実の乖離に苦しみ、摂食障害を患っていたと新聞の取材で明かしている。

しかし2021年、東京オリンピックではマティ・リーとのペアを組んだ10m高飛び込みシンクロで悲願の金メダルを獲得、個人の10m高飛び込みでは銅メダルを獲得した。

「編み物王子」としての経歴

東京オリンピックでメダリストとして注目されたのはもちろんだが、トーマスがひときわ話題となったのは観客席で編み物をしている姿だった。編んでいたのはカーディガンや犬用のセーターである。

編み物を始めたきっかけは2020年3月、新型コロナウィルスの影響によるロックダウンだという。「これまで正気でいられたのは編み物のおかげだ」とインスタグラムにコメントしている。先が見えず制限だらけの時間の中、編み物が彼に安らぎの時間を与えたのだろう。

2020年9月からはインスタグラムで編み物作品専用のアカウントを開設、家族や友人のためのニットやティーポットカバー、植木鉢カバーなどを掲載している。

2021年11月には「Made With Love」というブランドを立ち上げた。ウェブサイトで作成ガイド付きの編み物キットやシャツ、トートバックなどを販売している。

トーマス・デーリーの編み物作品

では、トーマスがどのような作品を作ってきたのか、彼のインスタグラムの過去の投稿から紹介しよう。東京オリンピック期間中に作ったカーディガンやプライベートでの作品など、計6点を取り上げる。

オリンピックマーク入りカーディガン

東京オリンピック期間中に編んだ白色のカーディガンだ。背中側にオリンピックマーク、肩にはイギリス国旗があり、正面には「東京」と漢字が毛糸で縫い付けられている。

トーマスはインスタグラムで「東京に到着したときから記念になる特別な作品を作りたかった」とコメントしている。

日英の国旗柄メダルケース

東京オリンピック期間に制作したメダルケースには、表裏にイギリス国旗と日の丸が編み込まれている。

メダルケースお披露目のリール動画は、金メダル獲得の翌日に投稿された。トーマスは「編み物やかぎ針編みを学んだことで、オリンピック期間中大いに助けられた」とコメントしている。

セレブ犬のためのセーター

東京オリンピックの女子3m板飛び込み、その決勝の観客席で編んでいて話題となったのがこれだ。インスタグラムで100万人以上のフォロワーがいるフレンチブルドッグの女の子・イジーのために作ったものらしく、イジーのアカウントに着用画像が公開されている。

初めて編んだセーター

赤地に白のストライプ模様のニットだ。「初めて編んだセーター!とても時間がかかった」とコメントしているが、初心者と思えない出来栄えにファンから「素晴らしい」「とても好き」「注文したい」といったコメントが殺到した。

飼い猫用のソファ

ト―マスは、飼い猫のために猫用のソファまで編んでいる。見た人からは、ソファでくつろぐ猫の姿に「かわいい」や、「ソファまで作れるのか」とレパートリーの広さに驚くコメントも見られた。

新しい家族へのプレゼント

2023年4月5日に個人アカウントの方でお披露目されたのは、新しい家族・フェニックスである。注目はフェニックスが包まれていたブランケットと着用していたカーディガンだ。この約1カ月後、トーマスは編み物アカウントで「フェニックスのために作った」とこの2つを紹介している。

「編み物王子」のさらなる一面

トーマス・デーリーは、高飛び込みと編み物以外にも意外な一面を持っている。彼は同性婚のうえ2児の親となっており、名が知れた金メダリストとしてLGBTQIA+の人々を勇気づける象徴的な存在でもあるのだ。

2人の子どもの親

トーマスは、2017年に脚本家のダスティン・ランス・ブラックと同性結婚した。2人の関係は、2014年に公となっている。

2018年に代理母出産で息子ロバートを授かった。この名前は2011年に脳腫瘍で亡くなったトーマスの父親からもらったという。2023年3月には、同じく代理母出産で、2人目の息子のフェニックスを迎えている。

家族4人が住むのは、イギリスではなくアメリカだ。その理由を彼は「イギリスは代理母出産の手続きが煩雑だが、アメリカはイギリスよりずっと合理化されているから」と話した。

LGBTQIA+コミュニティの象徴

トーマスが同性愛者であることを告白したのは2013年、ロンドンオリンピックで注目された翌年のことだ。

彼は東京オリンピックの記者会見でも、「今は誇りを持って言うことができる。僕はゲイでありオリンピックチャンピオンだ。みんなも何かを成し遂げられる」と、世界中のLGBTQIA+の人々に励ましの言葉を贈った。

さらに、2022年7月イギリスで開催されたコモンウェルスゲームズの開会式では、LGBTQIA+アスリートたちの人権について声明を発表した。イギリスとその旧植民地などが加盟するコモンウェルスの50カ国以上のうち、いまだ35カ国で同性愛が違法という事実を受け、「全てのアスリートたちが迫害などの危険にさらされることなく、安心して自分の力を発揮できるようにしなければならない」と訴えた。

こうしたトーマスの積極的な発信は、世界中のLGBTQIA+コミュニティで賞賛されている。

オリンピックでは選手たちの意外な一面にも注目

オリンピックでもっとも注目すべきは競技に違いないが、トーマスのように意外な一面が見られることもある。

実はオリンピックで編み物をしていたのは、トーマスだけではない。2014年のソチオリンピックでは、フィンランド代表のコーチがスノーボードのスタート地点で編み物をしている姿も注目された。スタート時にリラックスできるようにと選手から頼まれたとのことだ。

今後のオリンピックでも、競技以外の選手の魅力的な一面を知ることができるかもしれない。そう思うと今から楽しみだ。

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Text by NewSphere 編集部