盗まれた文化財がオークションで…ホットスポット欧州の事情

パンドラ作戦で回収された文化財|Europol

◆欧州で連携 違法売買摘発に成果
 欧州では、違法な文化財売買に立ち向かう国際的な取り組み「パンドラ作戦」が2016年から行われており、7回目となった2022年には60人を逮捕し、1万1000点以上の文化財を回収した。回収された文化財のなかには、トラヤヌス帝の姪(めい)がモデルと思われる大理石の胸像、修道院から盗まれオンライン市場に出ていた古書、遺跡から盗掘された古代コインなどがあった。

 通算では15万点以上の盗難にあった文化財を回収し、逮捕者も数百人に上るという。スペイン当局主導のこの作戦では、インターポールの盗品情報のデーターベースを利用している。今後もさらなる回収と逮捕が予想されている。(アートネット

◆展示品は植民地時代の盗品… 返還の議論進む
 文化財の盗難は世界的な問題だが、大英博物館やルーブル美術館など、欧州の有名な美術館や博物館が旧植民地から(しばしば違法な手段で)入手した文化財を今でも所蔵していることに批判の声もある。

 著名な美術館や博物館は、所蔵品の返還を始めているが、大英博物館だけは、1963年の大英博物館法により文化財の母国への返還を違法としており、近年論争の種になっている。古代ギリシャのパルテノン神殿を飾った諸彫刻である「エルギン・マーブル」について、2021年のユーガブの世論調査では、回答者の59%がイギリスではなくギリシャのものだとし、盗品は元々の持ち主に返すべきという考えを示している。

Text by 山川 真智子